MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

中庸(宇野哲人)

『中庸』(宇野哲人

 四書五経の四書ひとつである『中庸』。足して2で割ったような平均的な意味で用いる中庸ではなく、本書でいう中庸とは、その場、その時にもっとも適切妥当なこと。だから、本当の意味での中庸は、生易しいことではなく、常に中庸を得ることができるのは聖人と言われる。一方、中庸の庸は、普通のこと、当たり前のことという意味もあって、平凡な、当たり前のことの中にこそ、中庸があると考えられているから、どんな人でも中庸を得ることができる。そんな序文(宇野精一)を読むだけでも、深さと難しさを感じます。本書は、書き下し文、漢文字義、通解で『中庸』が網羅されています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯人心道心

・吾人の肉体の個人的方面より生じ、耳目口鼻四肢のよくとなって見るるから、これを人心といい、あるいは天の命ずる吾人の本性の正しきに基づき、道義の心となって見るるからこれを道心と言って、その知覚作用の同じくないところから、これを2つに分ける。

・そこで人心すなわち耳目口鼻の欲は、悪ではないが、悪に陥るの危険があって実に不安であり、油断はできないものである。

・道心すなわち道義の心は、完全至善なるものであるが、微妙にして明らかにし難く、たまたま少しばかり明らかならんとしてもまたたちまち暗くなりやすいものである。

 

◯善いところに着目する

・いやしくも善言あれば残る方なくこれを採用して、天下の知を合わせて我が物とする。もし又衆人の意見の中に悪なるものあれば、これを隠して外に表れぬようにし、意見の中に善なるものあればこれを発表し誉めたてて隠さぬようにするから、善なる者はいよいよ楽しみて善言を進めるようになり、不善なる者も遠慮もなくその説を述べるようになり、ますます天下の知を合わせることとなる。

・又衆論の中に互いに相反対する両極端の論があったときは、これを比較研究して、その中庸に敵うものを用いて民を治める。

 

◯己を修める

・学を好み学んで厭わざるのはすなわち知とはいえぬが知に近いというべく、力行して怠らざるのはすなわち仁ではないが仁に近く、未だこれを知らずこれを行う能わずとて、古の大舜に若かざるを恥ずるのは勇に近いといえよう。

・以上の3つを知ってますます学を好み力行して厭怠せず人に若かざるを恥づれば、我が身を修むるゆえんを知る。

・修己は治人の本である。故に我が身を修むるゆえんを知れば、人を治むるゆえんを知る。人を治むるゆえんを知れば、推してこれを大にして、天下国家をも治むるゆえんを知ることができる。

 

 言葉の一つひとつは難しいですが、解説を読みながらなんとなくでも内容の理解を進めていくことから学び始めるといいと思います。私も、まだ今回は本書の内容を実感できる自分のレベルではありませんでしたが、また今後改めて読み直してみて、自分のあり方と本書が近づいている実感が持てるようになるといいなと思います。 

中庸 (講談社学術文庫)

中庸 (講談社学術文庫)

  • 作者:宇野 哲人
  • 発売日: 1983/02/08
  • メディア: 文庫
 

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