『孝経』(全訳注:加地伸行)(◯)
中国古典。ちょっと難しいですが、『孝経』本編に加え、『孝経』とは何か、『孝経』の歴史など、『孝経』を読み解くのに役立つ情報が纏まっている一冊。そもそも『孝経』とは、「孝」という字が示すように、物・心ともに親に尽くすという道徳のこと。自己を修められれば、家が斉い、家が斉えば国が治る。その根本を成す「孝」の精神に触れることで、また自分のあり方が磨かれる気がします。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯開宗明義章(宗(もと)を開き義を明らかにするの章)第一
・人の身体は、毛髪や皮膚に至るまで、すべて父母からいただくものである。これを大切に扱い、たやすく損なったり傷つけたりなどしてはならない。それが孝の実践の出発である。
・そのように孝を第一として実践するならば、立派な人という評判を得、その名を後世に伝えることができ、父母の誉れとなる。それが孝の実践の感情というものである。
◯天子章第二
・親を愛せる者は、他者も愛せる。親を人として遇することができる者は、他者に対しても同様である。真に親を愛敬することができるならば、親への愛・敬すなわち孝道徳を国内の人々に教え、さらに国外の野蛮人にも広めていくことができる。
◯諸侯章第三
・地位が上であっても、下の者を人間として遇する態度であれば、高い地位にあって風当たりが強くとも安定している。富裕であっても、国家財政について、切り盛りをきちんとし、規範・礼法上において度合いを心得るならば、財政を安定させることになる。
・高位富裕の裏付けがあって初めて祖廟を保ち、国家を運営し、国民を円満にさせることとなる。その根本は、謙虚さであり、慎み深さである。
◯卿大夫章第四
・正式の衣服でなければ着ない。礼法にかなった言葉でなければ使わない。人の道でなければ行わない。このようなわけで、乱れた言葉を使わず、乱れた行いをしない。その結果、いうこと、なすこと全て規範にかなっており、善いとか悪いとかの区別がなくなる。
・正しい着装、正しい言葉、正しい行い、この3者が備わってはじめてその地位が保たれ、祖先の廟の祭祀を継続できる。
◯紀孝行章第十
・親にお仕えする態度は、
①普段家で親と接するときは敬意を尽くし、
②食事や衣服の普段においては常に歓ばせ、
③病気のときは心より心配し、
④亡くなったときは哀しみの極みを尽くし、
⑤その亡き後は弔い祭るとき厳粛に行う。
・この五者が十分であって、初めて親にお仕えすることができる。
・驕・乱・争を取り除かなければ、毎日、親のために、どんなに贅沢な食事を提供しようと、親不孝というものなのだ。
◯喪親章(親を喪うの小)(第十八)
・たとえ最長の機会を待つ場合にしても、3年を越えないという礼制は、人々に心の悲しみは尽きないとしても、それは心という内面の問題であり、外形としての喪服には期間という区切りがあり、そのときをもって終わりがあることを教えている。
身内ほど孝が難しいということはありますよね。甘えや反発、自分の内側から湧き起こる感情。素直になれるかどうかというのは、孝のポイントにもなりそうです。