バウッダ(佛教)(中村元)
『バウッダ』(佛教)(中村元)(◯)
昭和を代表する仏教学者である著者による仏教の起源から現代に至るまでの総覧。「バウッダ」とはサンスクリット語で「ブッダ(釈尊)を信奉する人たち」の意味。「阿含教典」と呼ばれるブッダの教えを直接に伝える唯一の教典群の要点を解説した一冊。原始仏典と言われる初期のブッダが直接説いたとされる経典から大衆向けに広まる大乗仏教となり、だんだんブッダ教えに様々な解釈が入り込み、変化していく流れなども詳しく述べられています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯釈尊の説法(5つの時期)
・釈尊が一代約50年続けられた説法を5つの時期にそれぞれ区分して解釈しそれぞれに独自の命名を施した。この分類により、経典が釈尊の教えのどの時期だったが分かり、例えば、般若経であれば、釈尊の生年後半に説法だということになる。
①華厳時(37日間(21日間))
②鹿苑時(12年間)
③方等時(8年間)
④般若時(22年間)
諸般若経
⑤法華・涅槃時(8年)
法華経、一日一夜だけ涅槃経
・『中部』(パーリ語152経)↔︎『中阿含経』(漢訳222経)
・『相応部』(パーリ語2,872経)↔︎『雑阿含経』(漢訳1,362経)
・『増支部』(パーリ語約2,308経)↔︎『増壱阿含経』(漢訳471経)
(⇨本書から脱線しますが、私は、パーリ語仏典の日本語訳を読み進めており、現在中部の108経まで来ました)
◯阿含経の思想
・形而上学に導こうとする諸テーマを10種にまとめている。
①世界は、常住(時間的に無限)
②世界は、無常(時間的に有限)
③世界は、有辺(空間的に有限)
④世界は、無辺(空間的に無限)
⑤身体と霊魂とは、同一
⑥身体と霊魂とは、別異
⑦真理達成者(如来)は、死後に生存する
⑧真理達成者(如来)は、生存しない
⑨真理達成者(如来)は、生存しかつ生存しない
⑩真理達成者(如来)は、生存する小野でもなく、かつ生存しないものでもない
◯阿含経の諸思想
▪️「苦」
・極限して現代語に置き換えるなら「自己の欲するままにならぬこと」「思い通りにならないこと」
・次の四種が「苦の起源」として教えられる
①欲望(およびその変形)
その欲望は満足と同時に消滅してしまう。「追求→完成→消滅」。欲望は無限である。果たされ得ないものを欲し望む、ということそのものが自己矛盾的であり、自己否定的なのである以上、そこには、むしろ「苦」は必然的なあり方である。
②無知(およびその変形)
自己は自己に関しては、最も詳しいはずなのに、その自己の内を自己は知らない。
③人間存在そのもの(実存といっても良い)
生・老・病・死の「四苦」。愛別離苦(愛するものと必ず離れらければならない苦)、怨憎会苦(怨み憎むものとどうしても会わなかればならない苦)、求不得苦(求めるものがどのようにしても得られない苦)、五蘊盛苦(総括して、一切は5つの集まりであり、そこに充満している苦)を合わせた「八苦」。
④無常(たえず生滅変化する)
生ずるものは、いかなるものであっても、すべて滅するものである(生の法は滅の法、生者必滅)。時間というものはない。時間は一切のもの・ことを支えつつ、決していかなるものでもなく、ことでもない。
▪️無我
・苦と、無常と、無我とは、本来はそれぞれ別々の場に、いわば独立した一項ずつとして説かれた。やがてまとめられ、「無常ー苦ー無我」という定型が生まれた。それぞれにいわゆる主語に相当するものを補って「一切皆苦」「諸行無常」「諸法無我」のフレーズととして完成し、「一切皆苦・諸行無常・諸法無我の三法印」となり、さらに「涅槃寂静」を加えて四法印となり、これから「一切皆苦」が外されて、「諸行無常・諸法無我・涅槃寂静の三法印」として落ち着いた。
▪️四諦
①苦諦(苦に関する真実は、苦の本質を明示し、掴み取る)
②集諦(苦の成立に関する真実は、いかにして苦が生起し、成立するかを探究し、解明する)
③滅諦(苦の滅に関する真実において、それからの超越であるニルヴァーナ(涅槃)ないしは解脱が据えられる)
④道諦(苦の滅に導く道の真実として、八正道をそのまま受け入れて置く)
▪️八正道
①正見(四諦の一つ一つに関する知)
②正思(煩悩を離れる、怒らない、傷つけ・害しない、という3つの思い)
③正語(虚言、そしる言葉、荒々しい言葉、戯言、という4つを断つ)
④正業(殺生、盗み、邪婬という3つを断つ)
⑤正命(法にかなった衣、食、住)
⑥正精進(善への四種の努力)
⑦正念(身、受、心をよく観察し、熱心で、気をつけ、さらに気遣い・世間における貪り・憂いを制する)
⑧正定(正しい精神統一、集注(四禅))
最近、日本文化にも根差している仏教の考え方を改めて勉強してみると、宗教というよりも生き方を考える上で勉強になるなあと感じ、さらに深掘りしていきたいと思っています。 生き方のヒントが満載の仏教の世界。身口意(行動、言葉、考え方)が一致感を増せば増すほど、自分らしく楽に生きられるし、それが他者貢献につながっていけば、さらに幸福感も増していくと思います。