MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

寂聴 生きる知恵(瀬戸内寂聴)

『寂聴 生きる知恵』(瀬戸内寂聴

 本書は、最も古時代のお経である法句経『ダンマパダ 』(真理のことば)についての講話をまとめた一冊。法句経は全部で423の詩から構成され、釈尊の語った言葉として、原始仏教の精神、釈尊の初心に触れられる貴重な経典です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯「生者必滅、会者定離

・みんなやがて死ぬ動物だと自覚して、他の人間に対しても、「ああ、あなたも近いうちに死ぬんですってね」と分かっていれば、死すべき者という同類として憐みが生じ、争ってなぞいられなくなると思う。残された自分の「時」をいかに意義あるように過ごそうかと考える。私があるからこそ、たった今自分の生命が輝いてくる。

 

◯「人は死すべきいのちであるから」(法句経より)

・「人がたとえ100年生きようと、行い悪く心乱れるなら、徳を積み心静かな人が一日生きるのにも及ばない」

・「人がたとえ100年生きようと、愚かに迷い心乱れるなら、知恵あり思い静かな人が1日生きるのにも及ばない」

・「人がたとえ100年生きようと、物ごとの興りどうして消え滅びるかのことわりを知らないなら、この生滅のことわりを知り人が1日生きるのにも及ばない」

・「人がたとえ100年生きようと、不死の境地を見ないなら、不死の境地を見た人が1日生きるのにも及ばない」

 

◯「怨みを捨てたその日から」(法句経より)

・「ほんにそうよ。怨みごころというものは、どんな手立てを尽くそうと、怨みを捨てぬその日まで、この人の世から消えはせぬ。怨みを捨てたその日から怨みは影を消すものよ。これこそ真実永遠の変わらぬ真理というものよ」

・人間の心には常に怨みが渦巻いている。他人から傷つけられたことを、人はなかなか忘れることができない。そのくせ、自分が気づかず、どれだけ人を傷つけているかわからない。

 

◯「自分こそ自分の主人」(法句経より)

・「自分こそ自分の主人。どうして他人が主人であろう。自分をよく整えたなら、自分こそ得難い主人になるだろう」

・所詮、人は他人に頼ってもダメ。独りで生まれ、独りで死んでいく人間は、自分を頼れるものに鍛え上げるしかない。釈尊も亡くなられる前に自己を灯明とせよと教えられた。「犀のようにただ独り歩め」という言葉にも、その思想が述べられている。

 

 本書は、『法句経』の入り口を垣間見るのに適しています。本書で興味が湧いたら『真理のことば 感興のことば』(中村元)などでより深く入っていくのがいいかなと思います。仏教の数多くの教典の中でも私も好きなひとつです。

寂聴 生きる知恵 法句経を読む (集英社文庫)

寂聴 生きる知恵 法句経を読む (集英社文庫)

 

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