原始仏典(中村元)
『原始仏典』(中村元)(◯)<2回目>
高野山大学のレポート提出に向けて再読。本書は、昭和の仏教大家でもある著者がNHKテレビ「インドの思想と文化」、NHKラジオ「こころを読むー仏典」での連続講義を7冊にまとめたうちの最初の2冊、「釈尊の生涯」「人生の指針」がまとまっています。この本は本当によくまとまっており、そして平易でわかりやすい解説。初期仏教に書かれている教えの重要箇所が掴めます。この1年かなり仏教について読んでいますが、やはり中村元先生の著書は秀逸であり、仏教を深めるなら、この型の書籍を探究してみたいと思う方です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯幸福について(『スッタニパータ』より)
・諸々の愚者に親しまないで、諸々の賢者に親しみ、尊敬すべき人々を尊敬すること。適当な場所に住み、あらかじめ功徳を積んでいて、みずからは正しい請願を起こしていること(258〜260)
・学ぶところ多く、技術を身につけ、身をつつしむことをよく学び、言葉が見事であること(261)
・父母に使えること、妻子を愛し護ること、仕事に秩序あり混乱せぬこと(262)
・施与と、理法にかなった行いと、親族を愛し護ることと、非難を受けない行為(263)
・悪をやめ、悪を離れ、飲酒をつつしみ、徳行をゆるがせにしないこと(264)
・尊敬と謙遜と満足と感情と適当な時に教えを聞くこと(265)
・耐え忍ぶこと、ことばのやさしいこと、諸々の(道の人)(哲人)に会うこと、適当な時に理法についての教えを請うこと(266)
・修養と、清らかな行いと、聖なる真理を見ること、安らぎを体得すること(267)
・世俗の事柄に触れても、その人の心が動揺せず、憂いなく、汚れを離れ、安穏であること(268)
・これらのことを行うならば、いかなることに関しても敗れることがない。あらゆることについて幸福に達する(269)
◯ダンマパダ (真理のことば、法句経)
・ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも汚れた心で話したり行ったりするならば、苦しみはその人に付き従う。車をひく(牛)の足跡に車輪がついていくように(1)
・ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも清らかな心で話したり行ったりするならば、福楽はその人に付き従う。影がそのからだから離れないように(2)
⇨つまり影はいつでも人のあとについていくが、そのようなもの。物理的に、外形的にみれば同じような行為でも、それを行った人の心が清らかであるか、汚れたものであったかということによって、その意義がまるで違ってくる。
・「かれはわれを罵った。かれはわれを害した。かれはわれにうち勝った。かれはわれらから強奪した」という思いをいだく人には、怨みはついに息むことがない(3)
・「かれはわれを罵った。かれはわれを害した。かれはわれにうち勝った。かれはわれらから略奪した」という思いをいだかない人には、ついに怨みが息む(4)
・実にこの世においては、怨みに報いるに怨みを以ってしたならば、ついに怨みの息むことがない。怨みをすててこそ息む。これは永遠の真理である(5)
⇨第二次世界大戦後の講和条約でのスリランカ国の声明の中に、この法句経のことばを引いている。「戦いは終わったのだ。もはや怨みに報いるに怨みを以ってすることをやめよう。この精神でセイロンは世界の平和に貢献したい」
2500年経っても色褪せない教えの数々。時同じくして、中国孔子の『論語』もそうですが、時代を超えて読み継がれているのには訳がある。「なぜ読み継がれているのか?」その問いを念頭において読むだけでも真理が見えてくるのではないでしょうか。