『センスメイキング』(クリスチャン・マスビアウ)(◯)
「人間のあらゆる行動には、先の読めない変化がつきものなのだが、理系に固執していると、こうした変化に対して鈍感に、定性的な情報から意味を汲み取る生来の能力を衰えさせることになる」
『世界標準の経営理論』(入山章栄)の全32回勉強会の中で先日取り扱った「センスメイキング」。深掘りするために読んでみました。ちょっと読みづらい内容ではありましたが、科学的な部分以外での判断力を磨くために、何を考え、どういうアプローチをすれば良いのか。豊富な事例とともにまとめられており、興味深い内容でした。再読、再々読しながら実践と往復して腹落ちしていく世界観かなと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯センスメイキングの5原則
①「個人」ではなく「文化」を
②単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を
③「動物園」ではなく「サバンナ」を
④「生産」ではなく「創造性」を
◯「個人」ではなく「文化」を
・文化にどっぷりと浸からなければセンスメイキングは成り立たない。ある文化について徹底的に深く理解しようと思えば、まずはその文化で暮らす人々の行動のありようやその理由を理解することが先決。
・哲学は難解と思われているが、深く根を張っている文化的な前提を分析する際には、最強の知的ツールとなる。
◯単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を
・薄いデータは、我々が何をするかという行動の面から我々を理解しようとするのに対して、厚いデータは我々が身を置く様々な世界と我々がどういう関係を築いているかという面から我々を理解しようとする。
◯「動物園」ではなく「サバンナ」を
・厚いデータをもっと手に入れるには、どこに行けばいいのか。本当の意味で複雑で美しい本物の世界に生きる人間について、学ぶのが第一歩。
・文化について何かを理解したければ、その痕跡に着目するのがポイント。つまり、芸術的遺産や歴史、しきたり。人間の経験について勉強するよりは、こうした視点を持つことの方がはるかに効果的な訓練になる。
◯「生産」ではなく「創造性」を
・「不確かということは、不安や不満の状態であり、我々はここからなんとかして逃れようと苦心し、確信が持てる状態に移りたいと考える。確信が持てる状態は穏やかで満足のいく状態であり、我々はこれを避けようとは思わないし、別の何かを信じるために変わりたいとも思わない」(パース)
・我々は、一生懸命に物事を考えることが苦痛だという理由だけで実にまずい判断を下すことが少なくない。幾多の紆余曲折を経て、数々の袋小路に悩まされ、思ってもみなかった突破口を見出す、そんな創造的な閃きにつながるような思考が大切。
・センスメイキングは、ビッグデータ時代のリーダーシップに欠かせないポイント。
①センスメイキングは、データ収集にあたって適切な文脈を選べるように誘導してくれる。
②データをうまく組み合わせて何かを的確に語らせるための切り口が、センスメイキングを通じて身につく。リーダーとしては、データを活用して深みのある世界観を描き出せるチームを作らなければならない。
・あたかもGPS頼みで目的地に連れて行ってもらうかのように、重層的な構造を持つ人間性を単純化して捉えようとせずに、北極星を頼りに航海をするように行く先を見極めるセンスメイキングが大切。
・我々は目の前の現実の世界を生きていく術を身につけながら、自分の立ち位置や向かっている方向について正確に捉える力を養っていくもの。
・センスメイキングでは自分がどこに向かっているのかを絶えず意識できるようになる。
管理職に昇格した30代後半頃から「暗記には限界がある」ことへの意識が強くなり、どうやったら次から次へとやってくる意思決定ができるのか?ということを考え始めました。その結果、行き着いたのが、暗記の手放しと感覚を磨くインプット&アウトプット。10年以上かかりましたが、着実に成果を出してきている実感があります。そのことと、この「センスメイキング」が繋がっていることを今回実感しました。再読する時には、本書の内容と自分の取り組んできたことの振り返りを照らし合わせていきたいと思います。