MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

他人がこわい(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン)

『他人がこわい』(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン)(◯)

 心理学良書シリーズの一冊。本書は、「社会不安」について、具体的には、あがり症・内気・社会恐怖の心理学がまとめられています。なぜその社会不安が生じるのか、社会不安をどうやれば克服することができるのか。自分なり、周囲なりに、少なからず思い当たることが多い内容であり、興味深く読めました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯社会不安を感じる4つの状況

①他人の前で発表、演技、演奏、競技をする

・実力を発揮すること

→他人から低く評価される不安

・批判的な言葉、攻撃的な反論、思いがけない質問などを相手から言われることに大きな不安を感じている。つまり、直接的に目の前にいる相手から低い評価を与えられてしまうことを怖れている。

 

②良く知らない相手と話をする、異性と会話を交わす

・何か気の利いたことを言うこと

→他人から見透かされる不安

・対人関係において、自分が許容できる相手との距離というものを持っている。これ以上相手に近づくと、自分の内面が見透かされてしまうというところにセットされている。

・他人から見透かされる不安の3タイプ

1)欠点を見抜かれる不安

2)秘密を見抜かれる不安

3)医女油性を見抜かれる不安

 

③他人に何かを要求する、自己主張をする

・自分の権利を毅然とした態度で講師すること

→他人の反応が分からない不安

・相手からの批判、非難、不快な態度を怖れるがゆえに生まれるもの。セルフサービス店や通信販売の存在は、この種の不安を感じる人にとってはまさにうってつけのシステム。

 

④他人に見られながら日常的な行為をする

・普段当たり前のようにやっていることをいつもどおりにすること

→他人に見られる不安

・いつもどおりにしなくては、自然にしなくてはと自分に強いる気持ちが、かえって緊張や不安を呼び起こし、そのせいで動作がギクシャクしてしまう。

 

◯身体反応(発生頻度の高い順)

①動機が激しくなる
②身体が震える
③汗をかく
④筋肉がこわばる
⑤胃が締め付けられる
⑥口が乾く
⑦身体がほてったり、逆に寒気を感じたりする
⑧赤面する
⑨頭が痛くなる
⑩頭が圧迫されたようになる
⑪気を失いそうになる

・自身、緊張、不安のいずれもが適度に高いレベルに達しているときに、最も良い成績が出せる(ヤーキースとドットソンの正規分布曲線)

 

◯行動が不自然になる

①他人とのコミュニケーションがぎこちなくなる

②不安を感じる状況を回避する、逃避する

→不安を感じる状況を回避したり、それができない時は逃避したりしていると、社会不安は軽減できるどころか、ますますひどくなってしまう。つまり、回避は社会不安を治すどころか、逆に悪循環をもたらしてしまう。

③極度に消極的になる、攻撃的になる

→不安を感じる状況から逃れようとすればするほど、より強い不安を感じるようになってしまう。人はそれをするのが困難だからやろうとしないのではない。やろうとしないからそれをするのが困難になってしまうのだ。

 

◯脳コンピュータの6つのエラー

①情報を偏って選別する
②根拠のない結論を下す
③自分のせいだと思い込む
④良いことを過小評価し、悪いことを過大評価する
⑤たった一つの結果をすべてだと思い込む
⑥「all or nothing」と考える

◯心の奥に潜む絶対的信念

・絶対的信念は、彼らが自分自身に課した個人的な決まりごとであって、たいていは「〜しなければならない」「〜すべきである」という命令調で自らの行動を律している。

 

◯社会不安はどこからくるのか

①生物学的要因(遺伝)

②心理学的要因(家庭環境、過去の経験など)

社会学的要因(時代、文化など)

 

◯社会不安を克服する

薬物療法心理療法

・社会不安に対する向精神薬の効用は、一言で言うなら、本人が今陥っている状況を打開し、克服へ向かって歩き出すきっかけを与えることである。

②逃げ出さない

エクスポージャー

1)「どういう状況に置かれると社会不安を感じるようになるか?」

2)「これらの状況には、例えばどういうものがあるか?」

3)「不安が一番小さいのはどの状況か?また、最も避けたい状況はどれか?」

4)「これらの状況に立ち向かうために、何を受け入れなければならないか?」

5)「どういう順序で、どういう時に行うか?」

6)「思い切ってやってみよう」

7)「うまくいったのはどういう点か?改善すべき点は?」

8)「何度か成功することで、別の状況にも挑戦できるようになるだろう」

③上手にコミュニケーションする

④ものの見方、考え方を変える

認知療法のプロセス

1)不安を感じた状況で思ったことを書き留めてもらう

2)相談者の思い込みを指摘する

3)「スキーマ」(絶対的信念)を明らかにし、それを修正する

 

  あがり症や内気なんかは、まさにあるあるです。緊張することも多いですし、その裏側に生じていることがどういうことなのか、「認識すること」。これだけでもグッと楽になります。「認知すること」はそれだけで効果があり、そのためには、最低限必要な知識を知っておくことも大切だと思います。本書シリーズはとても読みやすいので、お勧めです。

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