MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書(山崎圭一)

『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』(山崎圭一)(◯)

 そんなに日本史に興味ない人でも読みやすいと思います。①年号が全く登場しない、②古代から現代まで1つの物語で繋がる、③政権担当者を主役に展開というのが特徴。著者は、公立高校教師でYouTuber。授業の再生回数は、1000万回を突破という経歴の持ち主。多くの学生さんから支持されるには、それだけのわけがある!ということを実感できる一冊でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

せっかく京都にいるので、平安時代の冒頭を引用してみます。

◯うまくいかなかった長岡京への遷都

光仁天皇の次に即位した桓武天皇は、平城京に代わる新たな都の建設を始めます。それまでの都だった平城京はヤマト政権から続く豪族や仏教の勢力が強かったため、政治に「横やり」は入りやすく、天皇が強いリーダーシップを発揮しにくかった。

・しかし、桓武天皇の京都づくりはすんなりとはいきませんでした。桓武天皇がまず遷都したのは、長岡京という都です。長岡京は淀川の水運の便が良い一方で、度々水害に見舞われていました。また、造営長官の藤原種継が暗殺されたことで、造営途中で放棄され、より淀川の上流にある平安京に都が移されました。ここからいわゆる「平安京」が始まります。

 

◯初の「征夷大将軍」、坂上田村麻呂の活躍

・都づくりに並ぶ桓武天皇のもう一つの事業に、蝦夷の征服がありました。調停に従わない東北の勢力である蝦夷は、族長の阿弖流為(あてるい)のもとに強大化していたのです。桓武天皇は、征夷大将軍坂上田村麻呂を任命して大軍を送り、阿弖流為を服属させ、岩手県の北部まで朝廷の支配が及ぶ地域を拡大させました。

 

◯二大事業を中止した桓武天皇の「徳政」

・こうした「都づくり」と「蝦夷征服」の事業は桓武天皇の二大事業である「造作・軍事」として知られます。しかし、この2つの事業には莫大な費用と民衆への負担がかかります。都づくりの労働力や兵役に人手を取られて耕作に手が回らず、肝心の税収は安定しませんでした。そのため、廷内において「民衆の負担を軽くするために、二大事業を中止にするべき」という意見と「二大事業は完成まで継続させるべき」という意見が対立します。

・そこで、桓武天皇はできる限り民衆が耕作に専念できるように、二大事業の中止を決定します。その結果、平安京はいわば「未完成」の都となってしまったのです。平安京の復元模型を見ると、西南の区域の中は荒地のようになっており、「未完成」に終わったことがよくわかります。

・そのほかにも桓武天皇国司の交代のときに不正を働かないように監視する「勘解由使」の職を設け、また、郡司などの「生活に困っていない層」の子弟などを「健児」(こんでい)と言われる兵にして民衆からの徴兵を廃止しました。国司の不正を防ぎ、民衆の負担を軽くして農耕に集中できるようにした桓武天皇は、税収の安定のため、という側面があるものの、「徳政」を行った人物というイメージがある天皇です。

 

 1項目が見開きでこのまとめの分量程度ととても読みやすいまとまりです。これにイメージ図がついてくるので、学び直しや、ほぼ初めての感覚で読むにもちょうどよく、そこから興味を持ったら、もう少し深い書籍を移っていけばいいかなと思います。まずはストーリーを追いたいという方にはぴったりの内容です。

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