MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

買い物ゼロ秒時代の未来地図(望月智之)

『買い物ゼロ秒時代の未来地図』(望月智之)

 2019年に発行された『2025年、人は「買い物」をしなくなる』の生活者編として発売された本書。コロナ禍において、前作で描かれた2025年の未来までが早送りされたことで、さらに買い物の潮流に変化が生まれている現在。その加速している現在から未来の買い物を見たら、どんな景色が見えるのか?「コトのつながり」がキーワードになる、未来の買い物を「買い物の仕方」と「商品の探し方」から掘り下げていく本書。未来の買い物はどうなっているんでしょうねー?

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯デジタル時代の6つの買い物の仕方

ウィッシュリスト・ショッピング

 「ほしい物リスト」や「お気に入りリスト」に入れた商品を後でまとめて検討して購入する。

②レコメンド・ショッピング

 SNSなどで他人がおすすめしている商品をそのまま購入する。

③カウンセリング・ショッピング

 自分の情報を積極的に知らせた上で、店舗やブランドに自分に合う商品を選んでもらう買い方。

インフルエンサー・ショッピング

 有名人や憧れの他人がおすすめするものを購入する。「SNSで他人がおすすめしているものを買う」という点では、レコメンド・ショッピングと似ている。

⑤D2Cショッピング

 メーカーが卸売業者や小売などを通さず、直接、個人に販売するビジネスモデル。

⑥ストップウォッチ・ショッピング

 料理・片付け・仕事などをデジタルを駆使して時間を短縮するための買い物。

 

◯目的系と発見系

①目的系

・日用品、食品など、普段の買い物で購入する商品。買うのが「面倒くさい」ので、店舗に行くこと、決済などの買い物プロセスの自動化が進んでいる。

②発見系

・その商品を発見して初めて買う商品。

・魅力的なコンセプトがあるほど発見されやすい。

 

◯買い物はデジタルのあと

・たまに買うものや高額なものを買う場合、買う場所(商品を受け取る場所)が店舗というだけで、買うかどうかの意思決定を店でしているわけではない。店員の説明を受けて心変わりすることはほとんどない。

・買うものを決めずに店舗に行き、その場で購入の決断をするという買い物は、今や主流の買い物プロセスではない。

・店舗側は、顧客の目を引くような反則物や、陳列の工夫をするが、買うものが決まっている顧客は、一直線にお目当ての売り場へ向かうだけ。

 

◯目的系のAmazon楽天の違い

①ギフトに強い楽天

・商品情報を豊富に載せることができ、店舗による特典も多く、1回目の顧客にも買いやすい。

②日用品に強いAmazon

・買い物の面倒を減らすために、プロセスをどんどん自動化している。

 

◯人の繋がりよりもコトの繋がり

①絆のある人と人の繋がり(人間関係のベース部分)

②自分と複数の相手との繋がり(有名人、専門家、企業アカウントのフォローなど)

③知らない人とでも成立する繋がり(コトの繋がり)

⇨③の特徴として、自分も相手もSNSで積極的に発信している。メンバー同士が繋がるオンラインサロンなどもこれに含まれる。3つの繋がりでは最も弱い繋がりだが、この繋がりがとても増えている。

 

◯レビューを気にしない人は3%

・米国PowerReviewsの調査では、オンライン買い物客の97%がレビューを読み、89%が購入の意思決定の際の重要な情報源とし、リアル店舗の買い物客の39%がレビューを読んでから商品を購入している。

・CMが影響するのは、商品を「認知」するところまでで「購入」の判断になると圧倒的にレビューの影響が強い。

 

◯今後の口コミ一等地

TwitterFacebookなどのテキスト系は利用率の落ち込みが激しい。

・画像系のInstagramは、大きく伸びている。今の時代にジャストフィットしているのは、テキストでもなく、動画でもなく、画像。

 

◯体験

・買い物プロセスを省略していく一方で、体験を求めている。その商品を見る体験や使う体験。写真や動画を撮ってSNSでシェアする体験。商品そのもので差別化が激しくなっている今、生活者は体験で商品やサービスを選ぶようになっている。

・オンラインの買い物では、そうした体験が不足しがちになる。オンラインだけでは体験できないことをオフラインで体験する(そして、その体験をSNSを通じて再びオンラインに戻す)ために実店舗が求められている。

 

◯日本でライブコマースが流行らない理由

ライブ配信のプラットフォーム上で、ライブ配信者が視聴者に商品を紹介して販売するもので、テレビショッピングに近い。

・私たちがモノを買う時は、通常「その商品に関する専門性」に惹かれて買っているにもかかわらず、日本のライブコマース市場には、商品知識が豊富なライバーがそれほど多くないということ。

 

◯店舗は役割を変えながら生き残る

①体験型(ナイキの店舗など、体験が重視されるお店)

②倉庫型(モノがあるだけ。顧客の家の近くにある倉庫のイメージ)

 

  確かに、買い物には面倒なプロセスが多く、どんどんその面倒が取り除かれる方向に動いているように感じます。未来の店舗は、すぐ必要なモノを買いに行く、倉庫がわりのような存在になっていくのかもしれません。一方店舗では発見があったり、実際に触れてみるという体験があったり、やはり店舗の魅力も多いわけで。未来に触感スーツが当たり前になると、その体験自体も家でできてしまうという、全く想像のつかない世界へ向かっているのだということを改めて考える機会になりました。

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