『他者と働く』(宇多川元一)
サブタイトルに「「わかりあえなさ」から始める組織論」とあるように、人間関係など組織の生々しい現実、一方的に解決ができない問題、向き合うのが難しい問題をいかに説けば良いのかを解説した一冊。知識として正しいことと、実践の間には大きな隔たりがある。そこで著者が提案するアプローチ方法が、対話とナラティブ・アプローチ(物語・解釈)。どこの組織にでも起こりがちな問題なので、自分ごととして受け止め得やすいと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ロナルド・ハイフェッツ
①技術的課題:既存の知識・方法で解決できる問題
②適応課題:関係性の中で生じ、一方向で解決できない複雑で困難な問題
◯マルティン・ブーバー(哲学者)
・人間同士の関係性
①私とそれ:人間でありながら、向き合う相手を自分の道具のように捉える関係性。
②私とあなた:相手の存在が代わりのきかないものであると思える関係。
◯一方向に解決できない4タイプの適応課題
①ギャップ型:大切にしている価値観と実際の行動にギャップが生じる
(例)日本の女性の社会進出が著しく遅れていると言われて久しいが、女性の社会進出が必要であることを反対する価値観の人は少ない。しかし、足元では、ある時代までの男性にとっては都合の良かった男性中心の職場が形成されてしまっている。職場によってはそれを変えるような行動が難しい。
②対立型:互いのコミットメントが対立する
(例)営業部門(短期業績の達成)と法務部門(問題ない契約の成立)の対立。
③抑圧型:言いにくいことを言わないケース
(例)既存事業にあまり先行きがなさそうだと分かったけれど、撤退できない。
④回避型:痛みや恐れを伴う本質的な問題を回避するために、逃げたり別の行動にすり替えたりするケース
(例)職場でメンタル疾患を抱える人が出てきたときに、ストレス耐性のトレーニングを施す。
◯相手との溝に橋をかけるための4つのプロセス
①準備「溝に気づく」
・相手と自分のナラティブに溝(適応課題)があることに気付く
1)自分から見える景色を疑う(技術的なアプローチがうまくいかないことに気付く)
2)あたりを見回す(自分のナラティブを一度脇に置いてみる)
3)溝があることに気付く(関係性が適応課題を生み出していることを認める)
②観察「溝の向こうを眺める」
・相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティブを探る
1)相手との溝に向き合う(適応課題に取り組むことを決める)
2)対岸の相手の振る舞いをよく見る(相手の言動を観察する)
3)相手を取り巻く対岸の状況をよく見る(相手のナラティブを観察する)
③解釈「溝を渡り橋を設計する」
・溝を飛び越えて、橋がかけられそうな場所やかけ方を探る。
1)溝を越え、対岸にわたる(相手のナラティブをシミュレーションする)
2)対岸からこちらの岸をよく見る(相手のナラティブに基づいて自分がどう見えるかを眺める)
3)橋をかけるポイントを探して設計する(新しい関係性を作る方法を構想する)
④介入「溝に橋をかける」
・実際に行動することで、橋(新しい関係)を築く
1)橋をかける(実際に行動を起こして新しい関係性を築く)
2)橋を往復して検証する(新しい関係性を通してさらに観察をする)
3)②観察から繰り返す(さらに観察・解釈・介入をして新しい関係性を更新する)
組織開発について勉強中ですが、このどの組織でも課題となるテーマですが、きんちんと整理しようと思うと難しい難しい・・・。まずはパーツであっても、様々な課題へのアプローチ方法を押さえながら統合していきたいと思います。