『無』(鈴木祐)
著者は、『最高の体調』『科学的な適職』『ヤバい集中力』『超ストレス解消法』など、ベストセラー連発のサイエンスライター。本書は、神経科学と脳科学に基づき、精神機能を最高の状態(生まれながらに持つ判断力や共感力、好奇心といった能力を思い存分発揮できる姿)に導くための一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯怒りは6秒しか持続しない
・脳内では、大脳辺縁系がアドレナリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質を吐き出し、心と身体を先頭状態に変える。
・少しだけ待つと、人間の理性をつかさどる前頭葉が大脳辺縁系を抑えにかかり、少しずつ神経伝達物質の影響を無効化していく。
・前頭葉が起動するまでの時間は平均4〜6秒、そこから10〜15秒もたてばアドレナリンやノルアドレナリンの影響力はほとんど消えて怒りは鎮まる。
◯セットを整える
①感情の粒度を上げる
・感情の粒度が低い
何か嫌なことがあった際に、すべてを「ムカつく」「気持ち悪い」など1〜2つのボキャブラリーだけで表現する
・感情の粒度が高い
気分が悪いことに対して、「癪にさわる」「憤る」「イラつく」といった複数の表現を思いつき、その中から一番しっくりくる言葉を選ぶことができる
・感情の粒度を高める方法
1)新しい言葉を選ぶ
2)感情ラベリングを行う
②内受容感覚トレーニング
・心拍数トラッキング(手首や心臓などに手を当てずに、自分の心拍数を推測してみるエクササイズ)
1)手首や心臓に手を当てずに、自分の心拍数が30秒で何回になるかを推測
2)自分の心拍数が40秒で何回になるかを推測
3)自分の心拍数が50秒で何回になるかを推測
4)手首や心臓に手を当てて実際の脈拍を測り、30秒、40秒、50秒と、それぞれの実際の心拍数を出す
5)計測が終わったら、全ての数値を式に落とし込む
→1ー((実際の心拍数ー見積もった心拍数)÷((実際の心拍数+見積もった心拍数)÷2))
→0.7以上=内受容感覚は平均よりも高め
→0.61〜0.69=一般的な内受容感覚だが、まだ改善の余地あり
→0.6以下=内受容感覚は平均より低め
本書では、他にも、「筋肉感覚トラッキング」「スダルシャンクリヤ」といった方法が紹介されています。
◯セッティングを整える(詳細は本書参照)
①避難所を作る
・セーフプレイスワーク
・ソーシャルサポートワーク
・自己解説法
・54321法
・暗算法
◯「自己をならう」
・「自己をならう」とは「あなたがどのような物語で構成されているのかを知ること」
→友人と口論になった時に「この問題をどう解決するか?」と考える人がいれば、「私が悪いことをしたのだろうか・・」と思い悩む人もいる。このような思考の差は、あなたを形作る物語の違いによって発生する。
→脳が「他者と意見が異なるのは普通のことであり、問題解決に向かう前向きなプロセスだ」との物語をうめば、ネガティブな感情に囚われず事態に冷静に対処する。
・「自己をならう」には、「行動を縛る悪法を把握する」「悪法に対処する方法を学ぶ」ことが必要。
◯苦しみを左右する18の悪法
①放棄:「どうせ・・」「今は親しげな人もいずれ消えてしまう・・」
②不信:「他人はこちらを騙すはず」
③剥奪:「自分が求めるサポートを得られない」
④欠陥:「自分には何か問題がある」「私は劣っている」
⑤孤立:「自分は周囲に溶け込めない」
⑥無能:「私は日常の問題に対処できない」
⑦脆弱:「何か悪いことが起きるのではないか」
⑧未分:「他者のニーズや感情にばかり目がいき、自らのことが疎かになる」
⑨失敗:「私は仲間よりも失敗している」
⑩尊大:「自分は他の人よりも優秀だ」「特別な権利を得る資格がある」
⑪放縦:「新しいアイデアや計画に夢中になっても、始めた途端興味を失う」
⑫服従:「自分の意見を言うのが苦手で、怒りや悲しみを抱いても外に出さない」
⑬犠牲:「頼まれたことは断れない」
⑭承認:「他人からの注目を過度に重んじる」
⑮悲観:「人生の否定的な側面にばかり目を向け、ポジティブな側面を無視する」
⑯抑制:「感情を表現するのは恥ずかしい」
⑰完璧:「批判を避けるために高い基準を設定し、それを満たす努力をしなければならない」
⑱懲罰:「過ちを犯した人は厳しく罰せられるべきだ」
→本書ではこの後、解決に向けた方法が示されています(ここではスペースの関係から省略します)