本書は、認知科学者であり、ルー・タイス(コーチングの祖)の晩年の右腕として活躍された著者によるコーチングの要諦をまとめた一冊です。コーチングのコアはゴールとゴールの設定。そして、そのゴールにははっきりとした定義があり、それが「ゴールは現状の外側に設定する」こと。そのためには、ホメオスタシス(恒常性維持機能)を現状維持ではなく、ゴールに導くために使うことが大切です。コーチングをしている方でもしていない方でも、とても参考になる一冊だと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯コーチングとは
・コーチングの中心概念はゴール。
・コーチはクライアントではないから、最初からクライアントの現状の外側にいる。コーチがお手伝いすることで初めてクライアントは現状の外側にゴールを設定することが可能となる。
・コーチの仕事とは、現状の外側にゴールを設定するためのお手伝い以外にない。
・永遠に続く「現状」の外側に行くことがコーチング。
◯バランスホイール
・バランスホイールとは、私たちが設定するいくつかのゴールのこと。
・私たちの人生を豊かにする要素は、お金や仕事だけではない。
①職業、②健康、③趣味、④家族、⑤生涯教育、⑥ファイナンス、⑦地域社会への貢献、⑧世界への貢献
◯ブリーフシステム
・心の中には、これまでの経験や他人からの影響によって作り上げられたルールや常識、無意識のうちに出来上がってしまった縛りがある。「未来にまで続くあなたの現在を作っているシステム」がブリーフシステム。
・ブリーフシステムを理解するには、スコトーマ(盲点)を理解することから始まる。
・心理的もうてんとは、人は、その時に重要だと思っていることしか見えず、目の前にあっても見逃していることがとても多い。
・RAS(模様体賦活系)は、脳の基底部にある情報のフィルターのようなもの。重要なものを活性化せて、自分にとって重要なものだけが見えるようにしている。
・スコトーマが外れれば、現状の外側に行くのも容易。
◯コレクティブ・エフィカシー
・エフィカシーの定義とは、「ゴールを達成する自己能力の自己評価」。ブリーフシステムを変えるのは自分であり、その自分を変える能力を自分で評価することをエフィカシーという。
・エフィカシーで重要なことは上った下がったということではなく、高めたエフィカシーをどう使うか。
・エフィカシーを持つ人間が何人も集まると、相乗効果を生み出して自分が思ってもみなかったゴールが現れてくる。
・エフィカシーを高めることも、とてつもないゴールを設定することも、自分一人の能力でできることは実がそれほど大したことはない。もっと面白いこと、もっとすごいこと、もっと刺激に満ちたことは、自分を超えた先にある。コーチングのコアとはここ。
・高いエフィカシーを持つ人が集まることで、まさに思ってもみなかった、現状の外側のゴールに迫っていくことができる。この高いエフィカシーを持つ人が集まることを集団的エフィカシー=コレクティブ・エフィカシーという。
・高いエフィカシーを持つ者が集まれば、互いが互いのスコトーマを補完し合うことができ、見渡せる世界が一気に広がる。相手のスコトーマが見えるということは互いが互いのコーチとなって、さらなる現状の外側のゴールを設定することが可能となる。
◯コンフォートゾーン
・コンフォートゾーンを維持しようとする性質が、ホメオスタシス(恒常性維持機能)。
・ホメオスタシスは、新しいことや新しい人があなたの情報空間の中に入ってくると排斥するような働きをする。
・コンフォートゾーンは、過ごしやすい良い空間だと思いがちだが、その一方で、とても排他的でもある。排他的な空間に成長はなく、現状の外のゴールはない。
・現状の外側にゴールが設定されると、今までのコンフォートゾーンは居心地が悪くなってしまう。つまり、これまでのコンフォートゾーンは時が経つほど、アンコンフォータブルな空間に変わる。
・本当の新しいゴールが見つかったかどうかは、今までのコンフォートゾーンが苦痛になっているか否かですぐにわかる。
・ステップ・バイ・ステップ方式でゴールを達成しようとすると、現状のシステムから出るどころか、現実を強化してしまい、そこからますます出られなくなってしまう点が問題。スコトーマも外れない。
・コーチングが現状の外側にゴールを設定するのは、そうすることで、スコトーマが外れてこれまで見えなかった方法論、ゴールへの道筋が自然に見えてくるため。
・ホメオスタシスは、私たちが臨場感を持っている状態を普通と判断し、そこに近づけるように心身のバランスを整えていく働きを持っている。
・新しいコンフォートゾーンの方にホメオスタシスを設定させておくには、新しいコンフォートゾーンをよりリアルにイメージすることがとても大切になってくる。新しいコンフォートゾーンはリアルにイメージすること。現状の外側は漠然としたイメージになりやすい。
本書の中では、特に、「現状の外側のゴールをリアルにイメージすること」の大切さを感じました。そこができれば、現状に不満足、早く未来に行きたい!となり、その感情ができれば、自ずとRASが働いて、情報や方法、人脈(ご縁)などに気づきやすくなり、結果、描いたゴールを実現する方向に動いていくのだと思います。