MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

一倉定の社長学シリーズ⑨(一倉定)<新・社長の姿勢>

一倉定の社長学シリーズ⑨』(一倉定)<新・社長の姿勢>(◯)

 著者(1918−1999)は、経営指導歴35年、我が国の経営コンサルタントの第一人者で、大中小約5,000社を指導。本書は、著者の社長学シリーズ(10冊)の第九弾「新・社長の姿勢」。平成3年の作品です。

 「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である」。自分に関係のないことだと思いたくなることでも、すべては社長の責任。日頃の社長の姿勢が経営のすべて。社長がどのような姿勢で経営に臨めばよいかということを厳しく問うた一冊。この書籍は、尊敬する経営者の方にご紹介いただいたのですが、経営者にしか分からない、心の書なのだと思います。知識やテクニックではない、事業への向き合い方。経営者はもちろん、経営者をサポートしたいと思っている方には、おすすめの一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯社長とは事業を経営する人である

・事業というものは、やり方の上手下手で運命が決まるものではない。決定によって運命が決まるのである。その決定を行う人こそ社長である。

・決定は社長、実施は社員の役割である。そして任せるのは、実施であって、決定ではない。

・決定権というものは、結果に対して全責任を負う者のみが持てる権利。決定権を持つ社長が、決定に対して社員の意見を聞こうと聞くまいと、それは社長がその必要性から判断すればよいことである。そして、重大な決定ほど、社員に聞くわけにはいかない。

 

◯正しいワンマン経営とは

・社長とは「経済に関する危険を伴う意思決定をする人。

・①関心と行動の焦点を未来に合わせ、②市場と顧客の要求の変化に対応して絶えず革新を行い、③高収益事業を創り出すことこそ社長の役割。

・外部志向、未来志向、構造志向。これこそ社長の基本的態度。

・正しいワンマン経営とは、①社長は自らの経営理念に基づく我が社の「未来像」を持ち、②その未来像を実現するための目標と方針を、自らの意思と責任において決定し、これを経営計画書に明文化する、③経営計画を社員によくよく説明して協力を求める、④経営計画の最も重要な施策は自ら取り組み、他は任せる。

・いい会社とか悪い会社とかはない。あるのはいい社長と悪い社長である。

 

◯お客様あっての企業

・優れた企業は、顧客の要求に基づいて目標を設定する。凡庸な企業は、我が社の現状に基づいて目標を設定する。

 

◯社長はお客様のところへ行け

・毎日会社の中にいて、ほとんど外に出ない社長を「穴熊社長」という。穴の外のことなど何もご存じない。そのとことはセールスパーソンの報告だけを聞いて判断するというよりは想像しているに過ぎない。

 

◯生産効率を上げたけれど

・我が社の売上は上がっておっても、競合他社がこれ以上伸びておれば、市場占有率は下がる。これは、その会社が倒産に向かって爆進している姿を表している。だから「対前年売上高伸び率」という考え方は、まったくの誤りである。

 

◯正しいクレーム処理とは

・クレーム処理は、すべての業務に最優先して処理しなければならない。

・いかなる言い訳も絶対にしてはならない。「申し訳ありません。直ちに処置します」とだけ申し上げる。

・クレーム処理には、時間と費用を絶対に惜しんではならない。

・クレーム自体の責任は絶対に追及しない。クレーム不報告の責任を厳重に追求する。

・クレームは責任云々の問題ではない。クレームを起こそうと思っている人はいない。みんな一生懸命やっているのだ。しかし、人間である限り誤りを起こすのは仕方ない。大切なことは、一刻も早く正しい処置をとること。そのためには、クレームを即刻社長が知ること。だから、クレーム報告こそ最重要事項。これを怠ることはお客様と我が社への反逆である。

 

 私は、経営者をサポートする、経営者を応援する立場から本書を読んでいますが、著者の文章には熱がこもっており、経営者ではない私が読んでもピリッとします。最近の世の中の状況では、このぐらいビシッと言ってくださる方は、少なっていると思われ、書籍からでも緊張感を味わえる本書の存在は貴重なのではないかと思います。