『呼吸の極意』(永田晟)
内臓の働きを整えたり、血圧が高すぎないように抑えたり、メタボや老化を防いだり、ストレスを解消したりといったことすべてに呼吸が影響している。呼吸をする際、息を吐くことに集中してその時間を長くしつつ、腹式呼吸によって横隔膜呼吸をする際、息を吐くことに意識を集中しその時間を長くしつつ、腹式呼吸によって横隔膜を上下させることで副交感神経が活発に働くようになる。本書は、こうした呼吸による健康づくりの極意をまとめた一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯呼吸が内臓に与える影響
・息を吐くことが重要なのですが、具体的には10秒以上の時間をかけることが必要。ゆっくりと深く息を吐く。そして、少しずつ息を吐くことで呼吸時間をできるだけ長く延ばすことが大切。
・呼吸を意識することで副交感神経を活発にさせると、内臓に次のような効果がある。
①小腸の動きを調整する
②十二指腸、空腸、回腸の動きを促進する
③結腸の動きが促進され、水の再吸収が盛んになる
・運動中であってもゆっくりとした呼吸をすることで、副交感神経の働きが促進され、呼吸数が直接に自律神経系に影響する。これが運動と呼吸によるリラックス効果。
◯血圧を下げる呼吸法
・呼吸の仕方も深く血液循環に関係している。息を吸うときには血圧は高くなり、息を吐くときには低くなる。
・咳をしたり、むせたり、排便時の力みなどによっても血圧は高まる。
・呼吸の仕方によって血管の循環抵抗(血液の通りやすさ)や自律神経系の変化が見られる。循環抵抗についていえば、血管の縮小や拡大によって血圧は変化する。
自律神経が活発に働けば血圧は低下する。
・呼吸は静脈血管の拡大を促す作用があるので、呼吸を長くすると(10秒以上)、血圧は低下して行く。
・深く長く呼吸していくと、横隔膜はストレッチされ、上方に上がり拡大する。するとその刺激が脳幹部に伝わり、副交感神経が活発になる。心拍を抑え、血管を広げるようには働くので、心臓から拍出される大動脈血液量は減少し、循環抵抗は低く抑えられ、血圧が低下する。さらに体幹部の筋群は呼吸によってリラックスして弛緩するので、それらの筋群に分布している血管も広がり、血圧は低下する。深く長い呼吸は腹式呼吸法と同じで、横隔膜ストレッチのメカニズムで血圧が下がる。
◯ストレスを和らげる呼吸法
・20秒間息を吐き続けるとストレスが激減する。
・著者の実験によれば、20秒間息を吐き続けるとRR間隔の変動係数が著しく上昇し、副交感神経が優位となり、自律神経系のバランスがノンストレスの状態になる。
◯坐禅の呼吸効果
・壁に向かって30分間楽に座り続け(楽座)、脳波、呼吸運動、ガス交換について調べた結果、次のようなことが観察された。
①呼吸数が約50%減少し、1分間あたり平均8回になった。
②呼吸運動から見て、呼息(息を吐く)量が増え、呼息時間が長くなって、呼息時間が短縮された。
③坐禅中の脳波の中で、α波とθ派が増加した。
④無意識のうちに深い腹式呼吸が行えるようになり、ガス交換は効率良くなった。
◯カラオケで歌うことの癒し効果
①脳内ホルモンが分泌され、心の癒しと安心感が生まれる。気持ちがリラックスし、ストレス解消効果がある。
②呼吸中枢の中の呼息中枢を刺激し、迷走神経・副効果神経の働きを高め、主に内臓諸器官の活動を促進させる。内臓器官が活発に働き、体調が整えられる。
③呼吸筋群である肋間筋や横隔膜の筋紡錘やゴルジ腱器官を刺激し、ストレッチ反射を誘発することで、体幹部のリラックス効果が現れる。
④呼吸中の炭酸ガス分圧が4.0〜6.0%にまで達し、静脈洞の炭酸ガスセンターを刺激して血管が拡張され、呼吸量を多くする。その結果、血圧は降下し、リラックスした身体の状態が生み出される。
⑤発生によって気持ちや感情の表現が可能となり、欲求不満が解消され、満足感が得られる。
⑥丹田発声法によって副交感神経の活動が活発になり、ストレス解消につながる。
最近日常の中に取り入れるようになり定着しつつある瞑想。姿勢と呼吸を整えるところから始めるので、その際に意識したいなと思っています。呼吸が内臓に及ぼす影響の大きさも、まだ漠然とですが感じることができました。新書サイズなので、とっかかりとしては読みやすいと思います。