『マインドフルネス 気づきの瞑想』(バンテ・H・ダナラタナ)(◯)
本書は、ヴィパッサナー瞑想(気づきの瞑想)を丁寧に解説した一冊です。丁寧に解説するというと、絵やイメージ図がいっぱい!って感じですが、本書は文章だけなんですが、これが読みやすい!訳者の実力なんでしょうか。内容的にも具体的な瞑想のプロセスに加え、瞑想中に生じる問題(心や体に現れる症状)への対処も詳しく紹介されています。瞑想にもいろいろな種類がありますが、私は、この「気づきの瞑想」が一番しっくりきていて、日常生活においても気づき力がアップすることは、いろいろな状況に気づくことができるので、効果も高いと実感しています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ヴィパッサナー瞑想とは
・仏教の瞑想の中で最も古い。
・自分の心の動きを冷静に、無執着の心で観察すること。その結果、智慧が現れる。
・目的は、気づき(マインドフルネス)。非常に鋭く、集中し、微細に調整された気づきをもって、心の働きの本質を見抜くこと。
・エゴのない気づき。鋭く気づくことによってエゴが取り除かれていくという瞑想法。実践者はまず、心と身体がエゴに支配されている状態から瞑想を始める。気づきがエゴの働きを観察するにつれ、エゴの本質が洞察される。
◯心の姿勢
①何も期待しない
②無理しすぎない
③焦らない
④執着しない・拒絶しない
⑤手放す
⑥現れたものすべてを受け入れる
⑦穏やかになる
⑧自分で調べる
⑨あらゆる問題をチャレンジと見る
⑩考え込まない
⑪比べない
◯実践
・気づきの実践とは、自分に対して100%正直になること。心と身体を観察すると、ある対象に対しては、気づきたくないと思う嫌な心があることが見える。
・手順
①姿勢を整えて座る
②すべての生命に対して慈悲を向ける
③呼吸を3回する
④呼吸を通常の状態に戻す
⑤自然に何の力も加えずに、息をただ吸ったり吐いたりする
⑥行きを完全に吸って吐き始める前に一瞬間がある。この間と、息を始めようとする瞬間に気づく。
⑦息を完全に吐き終わったら、今度は吸い始める前に一瞬、間がある。この間にも気づく。
◯心がさまよった時どうするか?
①数を数える
・吸いながら「一、一、一、一」、吐きながら「二、二、二、二」、吸いながら「三、三、三、三」
・吸いながら「一〜十」まで素早く数える、吐きながら「一〜十」まで素早く数える。
・吸いながら「一、二、三、四、五」、吐きながら「一、二、三、四、五」
・いっぱいまで吸ったら「一」、吐ききったら「二」、いっぱいまで吸ったら「三」
・「吸う、吐く」を一つとして「一」、「吸う、吐く」を一つとして「二」
②「吸う、吐く」をつなげる
・吸うと吐くの間にある一瞬の間をなくしてつなげる。
③心を留める
・息が出入りするたびに触れる鼻孔の縁に心を留める。
④大工のように集中する
⑤門番のように観察する
◯姿勢の一般原則
・座るときに最も重要なことは、背筋をまっすぐに伸ばすこと。何枚ものコインを一枚一枚積み重ねるように、背骨をまっすぐに伸ばす。
・一直線上に頭を置く。このことをリラックスをして行う。
◯生きとし生けるものへの慈しみ
・自己嫌悪と自己避難を追い払うことから始める。最初に自分に対して慈しみを注ぐ。
・次に親しい人々に対して慈しみを向ける。
・次第に仲間の輪から外へと向かい、自分の嫌な人や自分を嫌っている人に対して慈しみを向ける。
・そして、生きとし生けるものに対して慈しみを向けていく。
◯問題に対処する
①身体の痛み
・座っているときに痛みが耐え難いものになってきたら動く。
・ただ、ゆっくりと気づきながら動く。
・動くと痛みはどう感じるか?動いたとき痛みがどう変わるのかを観察する。痛みが小さくなるのを観察する。
②脚のしびれ
・瞑想中に脚がしびれたら、その現象を注意深く観察する。どんな感じがするのか観察する。
③不思議な感覚(かゆみ、うずく、リラックス、軽くなる、浮いている・・)
・他の感覚と同じように扱う。
・生まれるのを観察し、消えるのを観察する。
④眠気
・眠気に気づく
・眠気は思考に、ある影響を与える。それを発見する。眠気に付随しておこる身体の感覚がある。それを見つけるようにする。
・気づきは眠気と正反対のもので、眠気を吹き飛ばす。もし眠気が消えない場合は、身体に何か原因があるかもしれない。それを調べ、対処する。食べ過ぎが原因かもしれない。
⑤集中できない
・スケジュールを調整する。順番を入れ替える。瞑想が終わったあと小説や映画を見る(先に小説や映画を見ると場面が浮かぶ)。
⑥退屈
・正しい気づきを取り戻す。
・退屈を観察する。
◯心の散漫に対処する
①時間を計る
・心が飛び回っていた時間を計る。「2分くらい気が逸れていた」「犬が吠え始めてから気が散った」など。
②深呼吸
・2〜3回さっと深呼吸をする。
③呼吸を数える
・吸うことと吐くことを一つとして数える。
④ラベルを貼る
・息が出入りするたびに、「吸う」「吐く」、「入る」「出る」と言葉を使う。
⑤呼吸に意識を向ける
・気づきを心が逸れた対象に向けるのは、次の3つのことに気づく間だけ。
1)それは何か?
2)どのくらい強いのか?
3)どのくらい続いているのか?
⇨ヴィパッサナー瞑想の目的は、何にも妨げられることなくひたすら呼吸に集中することではない。途切れることなく気づくこと。気づく、この気づくことによってのみ、覚ることができる。
瞑想の学びは体感すること。そして、体感した後に論理面を補強すること。そしてまた実践へ。この繰り返しで、長い時間をかけて振り返ると、「始めた頃より気づき力が増している」という感覚が出てくると思います。
私も3年近く瞑想を続けてきて、ここ最近はようやくその効果に気づき始めています。10年、20年と続けていくと、きっともっと大きな変化に気づくんだろうなという予感もあります。