『反応しない練習』(草薙龍瞬)
僧侶である著者が、ブッダの教えをもとに実用的で合理的な悩みを解消する方法についてまとめた一冊。全ての悩みを根本的に解決する方法は、「ムダな反応をしない」こと。悩みの始まりには、決まって「心の反応」がある。ブッダの教えとは、「心のムダな反応を止めることで、一切の悩み・苦しみを抜ける方法」のこと。その内容は、①心の反応を見ること、②合理的に考えること。その教えとは。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯悩みは無くそうとせず、「理解」する。
・悩みは、理解するところから始まる。
・「①悩みがある→②悩みには理由がある→悩みには解決策がある」と、順を追って理解していくことで、どんな悩みも確実に解決できるというのがブッダの合理的な考え方。
◯悩みを理解すると一歩踏み出せる。
・人生には悩み・問題がつきものだという現実を最初に受け入れてしまう。
・「ある」ものは「ある」と、まず理解すること。私には満たされなさ、未解決の悩みがあると自覚すること。解決への希望はそこから始まる。
・8つの苦しみ
①生きること
②老いること
③病にかかること
④死
⑤厭わしい者と出会うこと
⑥愛する人と別れなければならないこと
⑦求めるものを得られないこと
⑧ままならない人間の心
◯悩みの正体・原因(四つの心理”四聖諦”)
①生きることには”苦しみ”が伴う
②苦しみには”原因”がある
③苦しみは”取り除くことができる”
④苦しみを取り除く”方法”がある
・ブッダの考え方は、悩みがあるという現実を見据えて、その原因を理解して、解決への方法を実践しようという、最先端の医学にも似た明快な処方箋。「何かを信じれば救われる」という宗教ではなく、「こう考えれば悩み・苦しみを抜け出せる」という、シンプルな思考法。
・”執着”以前に、悩みを作り出しているものは、”心の反応”
◯問題の理由に着目する
・”求める心”は、発生後”7つの欲求”に枝分かれする。
①生存欲(生きたい)
②睡眠欲(眠りたい)
③食欲(食べたい)
④性欲(交わりたい)
⑤怠惰欲(ラクをしたい)
⑥快楽欲(音やビジュアルなどの感覚の快楽を味わいたい)
⑦承認欲(認められたい)
・まず”求める心”があり、それが”7つの欲求”を生み出し、その欲求に突き動かされて、人反応する。時には欲求を満たす喜びが、時には欲求が叶わない不満が生まれる。そういうサイクルを繰り返しているのが人間の人生。
・「心は求め続けるもの」と理解すると不思議な心境変化が訪れる。「このままではにけない」「何かが足りない」という得体の知れない欠落感や焦り、心の渇きが収まって、「人生はそういうもの」と、もっと大きな肯定が可能になる。
◯心の状態を見る
①言葉で確認する
・「ラベリング」と呼ばれる、心の状態に名前を貼る。「私は今◯◯している」
②感覚を意識する
・悩みはいつも「心の内側」に生じるので、悩みを抜けるには「心の外」にある体の感覚に意識を向けるのがベストの方法。
③頭の中を分類する
・三毒:1)貪欲、2)怒り、3)妄想
◯ムダに判断していないか
・判断することは気持ちいい。判断することで認められた気分になる。判断する心にはわかった気になれる気持ち良さと、自分は正しいと思える(承認欲を満たせる)快楽がある。
・どのような判断も個人の頭に浮かぶ想念。三毒の妄想にすぎない。
◯3つの執着
①求めるものを得たいという執着(だが叶わない)
②手にしたものがいつまでも続くようにという執着(やがて必ず失われる)
③苦痛となっている物事をなくしたいとう執着(だが思い通りには無くならない)
◯「慢」という病気に気をつける
・「慢」とは「自分の価値にこだわる心」。「自信がない」「自分は正しい」という思いも「慢」。
◯ムダな判断から自由になる方法
①「あ、判断した」という気づきの言葉
②「自分は自分」と考える
③いっそのこと「素直になる」
自分は偉い、正しいという「慢」の心に固まってしまうと、周囲との間に「壁」ができてしまう。人と関わり会えなくなる。何か言われると自分を否定された気がして、逆上したり、落ち込んだりと、苦悩を溜めていく。
◯本物の自信をつけるには
・あらかじめ「自信を持つ」というのは、現実には不可能。
・自信なんて、考えなくて良い。先のことはわからない。それよりも今しておかなければならないことがある。それが正しい考え方。
・なぜ自信を欲しがる人が多いかといえば、「妄想に囚われている」から。
①「自分はできる」と思いたいという「慢」
②「不安を打ち消したい」がための妄想
・「自信めいた気持ち」が出てきたときは、「あ、妄想が湧いた」「あ、判断した」と気づいて、リセットしようとするはず。「それより今できることはなんだろう(やらなきゃ)」と考える。これがブッダの合理的な思考法。
・自信をつけるたった一つの方法
①やってみる
②体験を積む
③ある程度の成果を出せるようになる
④周囲が認めてくれるようになる
⑤「こう動けば、ある程度の成果が出せる」と見通しがつくようになる
◯悩みを半分にする方法
・まず、心を「前と後ろ」に分ける。
・目を閉じて、①前の方を向く心と、②心の内側(奥・後ろ側)をみる心をイメージしてみる。
・前を見る心は、そのまま相手をみることに使う。反応はしない。ただ理解するという立場に立つ。
・後ろ側の心は、自分の反応を見る。
◯相手との関わり方
①相手のことを「判断」しない
②過去は「忘れる」
・過去を思い出して「記憶」に反応して、新しい怒りを生んでいる。
③相手を「新しい人」と考える
④「理解し合う」ことを目的とする
⑤「関わりのゴール」を見る
◯他人からの評価を追いかけない
・承認欲があるのは当たり前。問題は、そこからなぜ「他人の目を気にしてしまうのか」の理由、つまりプロセス。
・①「認められたい」(自分の価値にこだわる)欲求がある→②その欲求で反応して「どう見られているのだろう」と妄想する。
・妄想には確かめるすべはない。確かめようのないことは、放っておく。
◯「比較する」のは、非・合理的な考え方
・「比較する」目的は一つ。「承認欲を満たして安心したい」。「自分も捨てたものではない」「自分の方がマシ」と思いたい。
・まだ自分を肯定しきれていないから、自分に納得できていないから、自分の価値を確認するために「比較」しているのではないか。自分を「よし」と判断したい。
・「比較」というのは、実は、とても不合理な思考。
①比較という心の動きは、そもそも存在しない、バーチャルな妄想でしかない。だから、手応え(実感)を感じられない。
②比較しても自分の状況が変わるわけではない。だからいつまでも安心できない。
③比較によって安心感を得たいなら、絶対・完全に有利な立場に立たなければいけないが、それは実際には不可能。だから、常に不満が残る。
・認めてもらう、評価される、成功を収める、これらは、他人の領域、将来の話。自分の言葉と、この瞬間の思いと、今できること、それ以外のことは、結局は「妄想」。ブッダの思考では、いかなる時も妄想を目的とはしない。
◯「自分の物事の集中する」禅の智慧
①目を閉じる
②ムダな反応をリセットする
③目を開いて、目の前の作業に一心に取り組む
「自分の記憶に反応する」。そして、「妄想してしまう」という考え方は、確かに!って思いました。絶対的な自信も持ちようがないので、「不安=安心したい」という気持ちが生じてしまい、それは承認欲求へ繋がり、これも「妄想」につながる。比較しないという考え方の行き着く先は、ムダなストレスを感じない自分らしい人生なのでしょうね。
反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
- 作者: 草薙龍瞬
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
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