仏教の本義は、教えの実践をベースとした「自己鍛錬システム」。そのためにブッダは「サンガ」と呼ばれる自己鍛錬のための組織を作り、その中で暮らしながら煩悩を消すためのノウハウ説き残した。本書は、原始仏教の教えの一つであであり、ブッダ最期の姿を描いた『涅槃教』について解説されています。100分de名著シリーズは、簡潔にまとまっているので、手軽に要点を知りたい方にはお勧めです。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯『涅槃教』とは
・サンガを基盤とした仏教の組織論。
・サンガを自分の死後も末長く保っていくにはどうしたら良いかを真剣に考え、様々な遺言を残した。その現れが『涅槃教』。人の役に立つ優れた組織を、いつまでも変わらず保っていくための秘訣は、「釈迦の仏教」(原始仏教)にこそ大切に伝えられてきた。
◯輪廻
・五(六)道
天(神々)、人(人間)、(阿修羅(悪しき神々))、畜生(牛馬などの動物)、餓鬼(飢餓などで苦しみ続ける生き物)、地獄(ひたすら苦しむ恐ろしい状態)
・輪廻を止めて涅槃に入ることこそが、仏教修行者にとっての究極の終着点。
・我々を輪廻させるのは業のエネルギー。それを取り除かない限り輪廻は止まらない。業の原因を作り出すのは煩悩。
・我々がなすべきことは、自力で煩悩を断ち切って、業エネルギーが作用しないようにすること。そのためには精神集中のトレーニングによって心の状態を正しく把握し、煩悩を一つずつ着実に潰さねばならない。
◯組織が滅びない7法
①比丘(仏道修行者)たちがしばしば集会を開き、多くの者が参集する。
②比丘たちが一丸となって集合し、一丸となって行動し、一丸となってサンガの業務を遂行する。
③比丘たちが定められていないことを定めず、すでに定められていることを破らず、定められた法律を守って行動する。
④比丘たちが経験豊かで、サンガの父、サンガの導き手である、出家生活の長い長老たちを敬い供養し、その言葉に耳を傾ける。
⑤比丘たちが「輪廻の」再生を引き起こす渇愛に支配されない。
⑥比丘たちがアランヤ住処に住むことを望む
⑦比丘たちが心の思いを安定させ「まだ来ない良き修行者が来ますように、すでに来た修行者が快適に暮らせますように」と願う。
◯法の鏡
・自分が死んで生まれ変わった時点で、涅槃への道がちゃんと保証されているかどうかを自己判断する基準
①仏に対して清らかな信頼の気持ちを起こしているか
②法に対して清らかな信頼の気持ちを起こしているか
③僧(サンガ)に対して清らかな信頼の気持ちを起こしているか
④最高に優れた心構えを身につけているか
◯サンガ
・一般社会からの余り物で生きていく、完全依存型の組織。したがって、世間から信頼してもらわないことには生きていけない。ですから、自分たちが邪念のない、誠実で清浄な集団をであることを積極的に示していく必要がある。その点でサンガ内の自分たちの住居、つまりお寺の中を、隈なく公開することは当然の義務。
・ブッダは、真の安楽を手に入れるためには修行による自己改造が必要であり、そのためにはサンガという修行のための専門組織が必要であり、そのサンガの中で修行三昧を送るメンバーが生計を立てるためには社会からの援助が必要であり、その援助をいただくためには社会から尊敬される姿で暮らさねばならない、というこの構造をしっかり見抜いていて、実際にそういった生活システムを作った。
◯四念処
・生まれつき間違った考え方、捉え方をしてしまう4項目
・以下の間違った捉え方が煩悩の原因。生まれつき持っている間違った見方をリセットし、正しい見方に強制する修行。
(煩悩の原因)
①身(我々の肉体)
⇨人の肉体は素敵で好ましいものだ
②受(外界からの刺激に対する感受作用)
⇨この世には楽しいことがたくさんある
③心(我々の心)
⇨一人の人間に同じ一つの心がずっと続いている
④法(この世のすべての構成要素)
⇨法の中に”我”も含まれている
◯三十七菩堤分法(修行によって悟りを得るためのカリキュラム)
1.四念処
・身受心法
2.四正勤
・律儀断、断断、防護断、修断
3.四神足
・欲神足、勤神足、心神足、観神足
4.五根
・信、勤、念、定、慧
5.五力
・信、勤、念、定、慧
6.七覚支
・念覚支、択法覚支、精進覚支、喜覚支、軽安覚支、定覚支、捨覚支
7.八正道
・正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定
仏教はとても奥深い世界ですね。ちょっと勉強したくらいではよくわからないところも多いので、一度じっくりと取り組みたい分野です。「どう生きるか」ということを考えたときに、価値観や未来像を描くことも大切ですが、どのように考えて生きていくかもまた大切。人生の後半戦を考えるにあたりだんだんと必要性を感じるようになってきた分野です。