MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

幸福論(NHK100分de名著ブックス)(著:アラン、解説:合田正人)

 『幸福論(NHK100分de名著ブックス)』(著:アラン、解説:合田正人

 ヒルティ、ラッセルと並ぶ「世界三代幸福論」の一つ。著者はフランスの詩人・作家(1868〜1951)。生活の場面における幸福についての断章が一編につき便箋2枚程度、全部で93編に分けて書かれています。観念的ではなく、あくまで日常生活に立脚して幸福への指針を導き出した、文学的にも優れた名著です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯ピンを探す

・困難も不幸も本当の原因さえ分かれば、多くの場合、対処法はさほど難しいことではない。不幸にも不機嫌にも必ず原因がある。

・恐怖や不安を感じるのに身を任せてそれを増幅させるのではなく、それらを引き起こした「ピン」、つまり原因を探せ。さもなければ、手に負えない情念にとらわれて、真の原因に、ますます気づかなくなる。

 

◯想像力は性質(たち)が悪い

・想像力によって恐怖の量が変わってくる。あれこれ想像することで、不安や恐怖が増していく。「病は気から」ということも、不安や恐怖を増幅させることで怒っている。

 

◯幸福は「行動」の中にしかない

・本を読む楽しみは全く予見不能なので、経験豊かな読書家でさえ、このことに驚くほどだ。学問ははるかに眺めていてもおもしろくない。学問の世界に入り込むことが必要。はじめは無理にやらねばならないことがあるし、困難はいつもある。仕事を規則正しくすること。そして困難を、さらなる困難を乗り越えること。これがおそらく幸福の公式。

・幸福はいつでも私たちを避ける、と言われる。人からもらった幸福についてなら、それは本当である。人からもらった幸福などというものはおよそ存在しないものだからである。しかし自分でつくる幸福は、決して裏切らない。

・機能的に体を動かそうとする「意志」、困難があろうとも継続する「努力」、そして実際に「行動」すること。これこそが幸せになるために必要なこと。

 

◯ダンスのように礼節を習得する

・「奇跡」を自在に起こすために必要なのが「礼節」。あくまで自分自身の意思と行動の中に、世界に対する解決策が存在する。

・礼儀はダンスのようにして覚えるもの。ダンスを知らない者は、難しいのはダンスの規則を知り、それに自分の動きを合わせることだと思っている。

・しかし、これは物事のうわべに過ぎない。固くならず混乱せず、ひいては怖がらずに踊れるようにならなければならない。同じく、礼節の規則を覚えることは大したことではない。規則にかなっていたとしても、それはまだ礼儀作法の入口に立ったに過ぎない。

・身振りが的確で、しなやかで、堅苦しさや動揺がないことが必要。なぜなら、ちょっとした動揺も伝わってしまうから。相手を不安にさせる礼節とはなんであろうか。

 

◯幸福になることは「明白な義務」である

・「幸福であること」とは、気が向いたら選べばいい、というような事態ではまったくない。それは、「人間であること」と同義。

・結局のところ、上機嫌など存在しないのだ。気分というのは、正確にいえば、いつも悪いもの。だから、幸福とは全て、意思と統制によるもの。自らの意志で上機嫌でいるよう努めなくてはならない。

 

◯幸福は他人に対しても義務である

・自分一人で強く幸福になる者は、したがって、他の人たちによってさらに幸福で強くなるであろう。確かに幸福な人たちは良い取引を、良い交換をするだろう。人に幸福を与えるためには、自分自身のうちに幸福を持っていなければならない。

・幸福とは、報酬などを求めなかった者たちのところに突然やってくる報酬である。つまり、「報酬ではない報酬」。

 

 人に幸福を与えるためには自分自身のうちに幸福を持っていなければならないという考え方については、まさにそう思います。しかもその幸福を自分のうちに作り出すのは、「意志」×「努力」×「行動」。全て自分で作り出せるのだと。そう考えると、幸福論は、考え方の問題だけではなく、どの方向に向かってどのように行動し続けるのかという問題に発展し、自分の志や習慣化の問題とも密接になってきます。自分の歩みたい「ど真ん中」を見つけ、進み続けることが幸福感を自分の中に生み出し、それが周りの人へと波及していくのではないかと、今の自分を省みて感じました。

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