マインドセット(キャロル・S・ドゥエック)
『マインドセット』(キャロル・S・ドゥエック)
マインドセット=心のあり方。人間の信念は、本人が意識しているといないとにかかわらず、その人がどんなことを望むか、その望みが叶うかどうかに大きく影響する。信念を変えることは甚大な効果をもたらすことが実証されています。
本書は、スタンフォード大学心理学教授である著者が20年以上にわたり調査を行ってきた「やればできる」の研究成果をまとめた『「やればできる!の研究 能力を開花させるマインドセットの力』(2008年)の増補改訂版です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯2つのマインドセット
①硬直マインドセット
・自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人。
・自分が他人からどう評価されるかを気にする。
・自分は特別だということ、人よりも優れているということを証明したいから成長よりも成功することを選ぶ。
・自分よりもさらにできの悪いものを探して安心するというやり方。
・才能に恵まれているものに努力は不要だと思っている。言い訳しようがなくなるから、努力することが怖い。
②しなやかなマインドセット
・人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができると信じている人。
・自分を向上させることに関心を向ける。
◯マインドセットをしなやかにするには?
・その体験から何を学んだか(学べるか)、どうすればそれをさらに成長に結びつけることができるか?そう考える習慣を身につけよう。
・いつもやりたいと思っていながら、うまくできる自信がなくて、やらずにいたことはないだろうか。それを実行に移してみよう。
・その業績の陰にとてつもない努力があったことを知ろう。
・結果を気にするのではなく、学んで向上していくことに関心を向けよう。
・到達基準を下げたからといって、生徒の自尊心が高まるわけではない。
・優れた教師はみな、才能や知能は必ず伸びると信じており、学びのプロセスをとても大切にする。
◯危険な褒め方
・能力を褒めると生徒の知能が下がり、努力を褒めると生徒の知能が上がった。
・子供に「あなたは頭が良い」と言ってしまうと、その子は自分を賢く見せようとして愚かな振る舞いに出るようになる。
◯スポーツ〜成功は勝つことか、最善を尽くすことか
①しなやかなマインドセットの人にとっての成功とは、自分のベストを尽くし、学んで向上することだった。それはトップアスリートの考えとぴったり一致する。
②しなやかなマインドセットの人は、失敗をバネにしてさらに前進しようとした。彼らにとっての失敗は、教訓を与えてくれるものの、目を覚ましているモーニング・コール。
③しなやかなマインドセットの人は、スポーツにおいても成功を勝ち取り、それを維持する方法を責任を持って工夫していた。
◯ビジネス〜成長する企業と経営の意思決定
・偉大な企業への飛躍をもたらした指導者たちは、我が強くて自分を売り込みたがるカリスマ的人物ではなかった。謙虚で控えめで、絶えず答えを探して問い続け、その答えがどんな厳しいものであっても直視できる人たちだった。失敗をそれが自分の失敗であっても、真正面から受け止めつつ、その一方で、最後には必ず成功するという確信を失わない人たちだった。
・常に向上することを心がけている。周囲にできる限り有能な人材を集め、自らの過ちや欠点をしっかりと見据え、将来自分や自社にとって必要となるスキルは何かを率直に問い続ける。だから、自分の才能に幻想を抱いたりせずに、しっかりと根拠のある自信を持って前進することができる。
◯対人関係
・自分資質、パートナーの資質、人間関係の質、マインドセットの人はその3つとも、良い方向に変えていけると信じている。自分も成長するし、パートナーも成長するし、お互いの関係も改善できる。
・硬直マインドセットの場合の問題点は、①全てが自ずとうまくいって当然と思っていること、②夫婦間にトラブルが起きるのは、根深い性格的な欠陥がある証拠だと思っていること。
本書を読むと、数多くの事例の裏付けにより、ジャンルに関係なく、能力や結果ではなく、プロセスや成長に軸足を置いて物事に取り組むことの大切さが伝わってきます。とはいえ、日常において能力や結果が気になるのも当然であり、能力や結果を考えないのではなく、プロセスや成長にきちんと目を向けて認めていきましょうという姿勢が大切なのかなと思います。