MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

日新館訓(会津藩校)

『日新館訓』(会津藩校)

 本冊子は、福島県会津若松市にある日新館(会津藩の藩校)で販売されていたもので、当時の藩校での教えをまとめた小冊子です。日新館は、1664年、日本で初めに民間により創設した庶民のための学問所である稽古堂を起源としています。10歳になると会津藩士の子弟は日新館に入学し、生徒数は1000〜1300人だったそうです。授業は朝の8時から始まり、素読の教科書は論語、大学などの四書五経に、孝経、小学を加えた計11冊の中国の古典が用いられていたそうです。

 

(印象に残ったところ・・本冊子より)

孔子の教え

①仁:思いやりの心(恕(じょ):人を許す心)
②義:筋道を通す 義務
③禮(れい):礼儀作法 社会生活の秩序 習慣
④智:正しい判断力
⑤信:信頼 誠実 嘘を言わない
⑥忠:真心 陰ひなたのない心
⑦孝:親に真心をもって仕える
⑧悌:目上の人を敬う
⑨敬:相手の人格を尊重する

◯家訓

一.大君の義一心大切に忠勤を存すべし。列国の例をもって自ら処すべからず。もし二心を懐かば即ち我が子孫にあらず。面々決して従うべからず。

一.武備は怠るべからず。士を選ぶを本となすべし。上下の分乱るべからず。

一.兄を敬い弟を愛すべし

一.婦人女子の言一切聞くべからず

一.主を重んじ法を畏るべし

一.家中風儀に励むべし

一.賂を行い媚を求むべからず

一.面々依怙贔屓すべからず

一.士を選ぶには便壁弁侫の者を取るべからず

一.賞罰は家老の他これに参知すべからず。もし出位の者あらばこれを厳格にすべし

一.近侍の者をして人の善悪を告げしむべからず

一.政事は利害を持って道理を枉(ま)ぐべからず。会議は私意を挟み人の言を拒むべからず。思うところを蔵(かく)さずもってこれを争うべし。甚だ相争うといえども我意を介(はさ)むべからず。

一.法を犯す者は宥(ゆる)すべからず

一.社倉は民のためにこれをおく。永く利せんがためのものなり。歳饑(う)れば即ち発出してこれを済(すく)うべし。これを他に用うべからず。

一.もしその志を失い遊楽を好み驕奢(きょうじゃ)を致し士民をしてその所を失わしむれば即ち何の面目ありて封印を戴き土地を領せんや。必ず上表して蟄居すべし。

右十五件の旨堅くこれを相守り以往(いおう)をもって同職の者に申し伝うべきなり

 

童子

一.三大恩(父母の恩、先生の恩、社会の恩)

一.養老の道

一.学問技芸の則

一.福を得る道

一.日新の徳

 

◯六科(人間として基本的なものが身についている者の6つの例)

一.武芸、芸事を習い、いろいろな事をわきまえており、国を治める方法や政治の道を知っており、周囲にいる人物の優れているところを見つけ出すことができる人

二.人を心から愛し、物を大切にし、人々を良き方向に教え導き、城下の者の気持ちを安らかにする人

三.日本民族固有の伝統となっている宗教的行為の実践に心がけ、縁起の良いことや悪いこと、また武家社会の古い規定や習慣をよく知っていて、時には、経費のかかることもあろうし、また思わぬ利益を得ることもあろうが、私利、私欲がなく慎み深い人

四.古の、人格や徳行にすぐれ、理想的な人物として尊敬されていた人の、良いところを知り、時と場所をわきまえて物事を実行し、たとえ戦争が起こっても困らないように、その備えを十分にするために日頃から鍛錬を怠らず、落ち着いて勇気があり、思い切りの良い人

五.誠意をもって、まるで自分ごとのように、相手に力を貸してあげ、相手に代わって仕事をすることも厭わない素直な心を持ち、獄中につながっている人を裁く規則に詳しい人

六.集団の中で対立や仲間外れにされることがなく、物事の道理に逆らうこともなく、また、道路や川の整備、川に橋をかけたりする各種の職人たちを良く指導できる才能のある人

 

◯六行(模範となる人物の6つの行い)

一.大いに、父や母に孝行する者

二.大いに、父や母の言うことを聞き、兄弟仲良くし、年上の人を尊敬し、幼い者をかわいがる者

三.大いに、家の中、親類縁者の人達と仲良くできる者

四.大いに、仲間をつくり、お互いに仲良くするが、付き合いのけじめを忘れない者

五.友人から信頼され、自分が仕事を任され、しかもその仕事を長いこと担当できる者

六.親類縁者の人達や友達が災難や病気にかかり、あるいはお金がなくて困っているときに自分のことのように心配して、お金や品物を差し出すことができる者

 

◯八則(このような人物はいけないと言う8つの警告)

〜略〜

 

◯幼年者心得之廉書(かどがき)

〜略〜

 

什の掟

一.年長者の言うことに背いてはなりませぬ

一.年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ

一.噓言を言うことはなりませぬ

一.卑怯な振舞をしてはなりませぬ

一.弱い者をいじめてはなりませぬ

一.戸外で物を食べてはなりませぬ

一.戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ

 ならぬことはならぬものです

 

 今の時代にはそぐわないものもありますが、今の時代に忘れられている人として大切なことがたくさん書かれています。頭での理解ではなく、実践によって、体に刷り込んでいくような教えです。コンパクトにまとめられているので、参照しやすい冊子です。会津に行かれた際には、是非、日新館に立ち寄ってみてください。 

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