『あしたへの論語』<前編>(松崎昇)(◯)
サラリーマンである著者が論語を学んで10年、全500章近い論語の全訳解説を記したのが本書。学者ではなく、サラリーマンが書かれたということで、堅苦しくなく読みやすい記載です。一方で、様々な東洋思想を学んでおられ、論語以外からの引用も多く、学び多い一冊です。前編だけで400ページ強という大作です。手軽に参照できる逐条解説として使い勝手がよく、保存版にしたい内容でした。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯全20編
①【学而(がくじ)編】君子への道
②【為政編】リーダーのあり方
③【八佾(はちいつ)編】礼節を忘れない
④【里人編】(人と誠実に接する)
⑤【公冶長(こうやちょう)編】正道を行く
⑥【雍也(ようや)編】面白く大らかに生きる
⑦【述而(じゅつじ)編】先人の尊き教えに耳を傾ける
⑧【泰伯編】人知れず人徳を磨く
⑨【子罕(しかん)編】人間関係の微妙さを知る
⑩【郷黨(きょうとう)編】言葉遣いに気をつける
(ここから後編)
⑪【先進編】物事の大小を知る
⑫【顔淵編】弱い自分に打ち勝つ
⑬【子路編】勇気を養う
⑭【憲門編】人としての恥を知る
⑮【衛霊公編】王道と覇道
⑯【季子編】真実を見抜く
⑰【陽貨編】高き志を抱く
⑱【微子編】組織における身の処し方
⑲【子張編】人道を貫く
⑳【堯曰(ぎょうえつ)編】天命を知る
◯学習
・「学び」には日頃の「読書」などから学ぶことと、仕事などの「実践」から学ぶことの2つがあり、「習」には繰り返すという「復習」の意味がある。この「学」と「習」の2つを合わせて「学習」という。
◯忠
・「忠」という字を見ると「口」という字と「心」という字が一本の線でつながっている。これは、口で言うことと心で思っていることは同じで、自分の言葉に嘘偽りはないと言うことを表している。
◯どの国に行っても登用される理由
・5つの徳を備えているから
①温:温かであること
②良:善良であること
③恭:礼儀正しいこと
④倹:慎ましやかであること
⑤譲:譲ること
①仁
②義
③礼
④智
⑤信
◯王道と覇道
・王道:人を「徳」の力で動かそうとする
・覇道:人を「力」によって動かそうとする
◯一生の6段階
①15歳:志学
②30歳:而立(じりつ)
③40歳:不惑
④50歳:知命
⑤60歳:耳順(じじゅん)
⑥70歳:従心
◯「子曰く、学びて思わざれば則ち罔(くら)し。思いてまなばざれば則ち殆(あやう)し。
・書物や先輩を通して学ぶことがあっても、それを自分の心の中で思い巡らしたり実践で試したりしなければ、ぼんやりとしたままである。逆に、自分が実践して知り得た狭い範囲の知識だけに思いを巡らし、広く書物や先輩に学ばなければ危険人物になる。
◯「礼」
①欲望に堪えるもの
②奥ゆかしいもの
③仁心が伴うもの
④慎ましやかで心からの情があるもの
◯五倫の道(儒教)
①父子の親:親とこの親しみのあり方
②君臣の義:上下の理のあり方
③夫婦の別:夫婦の違う役割のあり方
④長幼の序:年長者と年少者の順番のあり方
⑤朋友の信:友達間の信頼のあり方
◯「慎独」
・他人の見ていないところでこそなされる大事な修養
・他人がいていないところでも慎ましやかな行動をとること。そこにムラがあるということは、その人に陰日なたがあるということ。
◯「季文子、三たび思いて而る後に行う。子之を聞きて曰く、再びすれば斯(ここ)に可なり」
・大夫の季文子は万事に慎重で3回思いを巡らしたのちに物事を実行した。これを聞いた孔子は2回考えれば十分であると言った。
・ことにあたって熟考することは人間の大切な工夫であるが、あまりに思いすぎ考えすぎると、かえって、断行の勇を欠き、またかえって邪念が起こって別の迷いが生じるものである。
◯「思考の三原則」
①目先に捉われないで長期的に見る。
②一面に捉われないで多面的に見る。
③枝葉末節に捉われないで根本的に見る。
◯謝る
・「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」
・「過ちて改めざる是れを過ちと謂う」
・気をつけたいのは過ちを犯したときに、”謝る”という行為。
◯聖人の特性
①温厚である
②荒々しくない
③ひかえ目である
④穏やかである
⑤激しさがある
⑥威厳がある
◯「徳」
・徳とは、人間としての正しい道を尊重すること。その道が正しいかどうかを判断するには、道理に明るくなければなりません。
・「道を尊ぶ」の「道」とは「道理」と「人道」の2つを指しているのかもしれない。つまり、道に明るく人間的に温かい人が徳者だと。
◯「仁に過ぎれば弱くなる。義に過ぎれば固くなる。礼に過ぎれば諂(へつら)いとなる。智に過ぎれば嘘をつく。信に過ぎれば損をする」(伊達政宗)
最近、さらに論語を突っ込んで学ぼうと、『論語講義』(渋沢栄一)(なんと16,200円)を購入し、読み始めました。こちらは1章ごとに論語の解説と実社会(特に実業)での活用を結びつけたとても深い学びが得られます。東洋思想の原点にある論語は、自己啓発の基本書としてもぜひ習得したいものです。
あしたへの論語 サラリーマン三〇〇〇日の「人間学」探究 ―前篇
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