MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ツァラトゥストラ(NHK100分de名著ブックス)

 『ツァラトゥストラ(NHK100分de名著ブックス)』(西研

 人が悩みや苦しみを抱えたときにどう生きるか。 ニーチェの『ツァラトゥストラ』は、「私たちがどうやっていきていけば良いのか」という問いについて、まっすぐに記された哲学書です。どちらに向かっていいかよくわからない、何が大切な価値ある生き方なのかもわからない、だからなかなか元気が出ないという「ニヒリズム」。まさに現代の課題に答えを出そうとした内容です。

 

【本書の学び】

キリスト教も民主主義も社会主義も、安楽を目指している。それは人間を凡庸にする

②超人は、忍耐強さ⇨批判⇨自由の3段変化を経る

③頼ること、尋ね合うことで、安心できる空間ができ、そこから創造性が生まれる。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

ニーチェ(1844〜1900年)

・『ツァラトゥストラ』はいわば「聖書のパロディ」として書かれた。”神は死んだ”という言葉が出てくるが、ニーチェといえば強烈なキリスト教批判をした人。

ニーチェは若くして成功に恵まれたが、後半は挫折と苦悩を抱えつつ執筆し、最後は精神を病んで死んだ。

 

ルサンチマン(妬みや恨み)を克服せよ

 ・ルサンチマンの根っこにあるのは、自分の苦しみをどうすることもできない無力感。絶対認めたくないけれども、どうすることもできない。この無力感を何かに復讐することで紛らわそうとする心の動きが起こる。これがルサンチマン

ルサンチマンがなぜ問題かというと、「自分を腐らせてしまう」から。

・悦びを求め悦びに向かっていきていく力を弱めてしまう。「この人生を自分はこう生きよう」という自分として主体的に生きる力を失わせてしまう。

ニーチェの考える「良い」は、自分たちは力を持っているという自己肯定。そのような力を持たないことが「悪い」。

キリスト教にとっては、他人のため、人々のためを思い行為すること。つまり、その行為を受けた人にとって「良い」のであり、自分の「快」や「喜び」を求めるのは「悪」である。

 

 ◯”神の死”から”超人”へ

・「超人」とは、神に代わる新たな人類の目標。神は死んだのだから、それに変わって人類が目指すものが必要になる。

・「末人」とは、憧れを持たず、安楽を第一とする人。神が死んだニヒリズムの世界では、憧れや創造性を抱くことなく、安全で無難に生きることだけを求める人間が出てくる。

・精神が超人になっていくプロセスは3段階

ラクダ(求めて重い荷物を担う)⇨忍耐強い

②獅子(我欲す)⇨既存の価値と闘って打ち砕き、俺はこうすると宣言する

③幼子(新しい始まり)⇨否定する必要はなく、自分から溢れ出てくる創造力に身を委ねている

・頼らないのが自立ではなく、助力が必要ならばそれをきちんと他人に伝えられることが自立。

 

◯無への意志

・意欲の対極にあるニヒリズムニヒリズムの本質は、無への意志。最高価値が信じられなくなってしまって、方向喪失に陥ること。そもそも最高価値を立てること自体が誤っており、深い意味ではそれもまたニヒリズム。最高価値を立てるということは、自分を守る絶対の価値基準を作ることだが、それは自ら意欲し創造していこうとする精神の動きを封じてしまいかねない。

・創造性を目指すのではなく、安楽状態を作ろうとしている点で、民主主義は人間誰もが同じで安心していいという思想であり、こうして人間を均等化していき、努力せず安楽に暮らすことを正当化していく思想。

社会主義にしても、所得を平均化して平等な安楽な生活を保障することを目指すものであって、創造性の視点は全くない。

・それらは人間の生を凡庸にするだけ。

 

永遠回帰

・人生のあらゆるものが永遠にそっくりそのまま戻ってくること。

永遠回帰を受け入れることができるかどうかが、人間を弱者と強者に振り分ける肝心要の点。永遠回帰を受け入れられる人こそが強者であり、「超人」になりうる。

・苦しみも与えたが悦びを作り出すきっかけにもなっている。そう考えるならば、マイナスを含めて自分の人生を肯定できる。そして、その人生を何度でも繰り返そうと思えるのかもしれない。

 

 主体的に生きる。環境のせいではなく、自分の意志で自分の内側から湧き起こるエネルギーに従い自分らしく生きる。一人ひとりがそんな人生を歩むことが大切。そう読み取れる内容でした。まさに今の時代、情報が溢れ、協調性や調和が評価される時代だからこそ、何も考えず大きな時代の波に乗ればいいという考えにもなりがちですが、人生は一度きり。必ず老いて死ぬわけだからこそ、自分の人生を能動的に考える。そんなきっかけになる内容でした。 

ニーチェ『ツァラトゥストラ』 2011年8月 (100分 de 名著)

ニーチェ『ツァラトゥストラ』 2011年8月 (100分 de 名著)

 

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