MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

知識ゼロからの空海入門(福田亮成)

『知識ゼロからの空海入門』(福田亮成)

 8月末に高野山の瞑想合宿に参加したため興味関心が湧いている空海(774〜835年)。多数の書籍が発売されていますが、まずは概要を把握しやすそうなものを店頭で選書しました。本書は、150ページくらいで図表も多く、見た目からしてとっても読みやすいです。真言密教の世界観はとても奥深く、本書を読んでいる途中から、もう他の本を買って読みたい欲求が湧いてくる内容でした。

 

【本書の学び】

①この世を形成するのは「体」「相」「用」に分類される

②この世のすべては「地水火風空」と認識する力「識」で成り立つ

真言とは真実そのものである大日如来が発した言葉

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯ざっと年表

・774年:誕生(讃岐国多度郡屏風ヶ浦

・774〜787 年:神童の少年時代

・788〜793年:仏門に転じる(都に上り、おじの阿刀大足のもとで漢籍を学ぶ)

・797年:『三教指帰』を著す

・797〜804年:『大日経』に出会う

・804年:入唐を決意する⇨福州に漂着

・805年:恵果に師事する⇨密教の第8代祖師となる(正統承継者)

・806〜808年:入京を許されず太宰府で足止め

・810年:鎮護国家の修法(嵯峨天皇の心を捉える)

・812年:最澄の入門(813年経典の拝借を断り疎遠に)

・816年:高野山の開山

・823年:東寺を造営

・828年:綜芸種智院開校(庶民に教育の場を解放)

・835年:入定

 

◯即身成仏

・「この生のままに仏である」とする密教の根本思想

①理具成仏(人間は生まれながらにして仏性を備えていると確信する)

②加持成仏(三蜜行によって仏と一体になった境地を実感する)

③顕得成仏(本来備わっている仏性が顕在化し、仏の境地に至る)

 

密教の世界観

・「体」(ものそのもの。花であれば花そのもの)

・「相」(ものの姿や形。花であればさまざまな色・形・大きさがある)

・「用」(もののそれぞれの働きや活動。花であれば蕾を膨らませ花を咲かせること)

・「六大」

①地(固体)

②水(液体)

③火(燃えるもの)

④風(気体)

⑤空(空間)

⑥識(認識)

 

◯三密加持

・行者(三業:言葉・身体・心)

・仏(三密:口密・身密・意密)

⇨手には印契を結び、仏の言葉である真言を口で唱え、心で仏との一体化を念ずる。

 

◯心の10段階(「十住心論」)

①異生羝羊心(いしょうていようしん)

・食欲や性欲といった本能にのみ支配された最も低い次元(一向行悪行)
②愚童持斎心(ぐどうじさいしん)

・本能に支配されていた段階から良心が芽生え、人への施しに目覚めた倫理的段階(人乗・儒教
③嬰童無畏心(ようどうむいしん)

・来世があることを知り宗教心に目覚め、母親に抱かれた幼子のような安らいでいる段階(天乗・道教バラモン
④唯蘊無我心(ゆいうんむがしん)

・この世に実体としての個我は存在しないと自覚し、無我の境地に達した段階(声聞乗)
⑤抜業因種心(ばつごういんじゅしん)

・この世は因縁により生じていることを自覚し、とらわれを取り除いて悟りの世界を得る段階(縁覚乗)
⑥他縁大乗心(たえんだいじょうしん)

・一切衆生に対して絶対の慈悲が生じ、ただ心の働きだけが実在であると悟る段階(法相宗
⑦覚心不生心(かくしんふしょうしん)

・あらゆる現象の実在を否定し、すべては空だと徹底して悟った安楽の段階(三論宗
⑧一道無為心(いちどうむいしん)

・この世の一切の現象はすべて清浄であると悟り、唯一絶対の立場に立つ段階(天台宗
⑨極無自性心(ごくむじしょうしん)

・この世は大日如来の悟りの世界であると自覚する、顕教の究極の段階(華厳宗
⑩秘密荘厳心(ひみつしょうごんしん)

密教の教えによって宝蔵(心)の扉を開け放ち、真理の世界と一体になった段階(真言宗

 

 一つひとつ丁寧に学んでいきたい欲求が湧いてきますが、まずはどんな世界観かを見るのに役立ちました。主催している読書会のテーマとして「空海」を取り上げるのも深めていく手段としていいかなぁと思いつつ、さらにもう一冊読み進めてみます。

知識ゼロからの空海入門

知識ゼロからの空海入門

 

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