MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

FACTFULNESS(ハウス・ロスリング)

『FACTFULNESS』(ハウス・ロスリング)(◯)

 事実を正しく認識することの大切さを学ぶことができる一冊です。まず世界の情勢に関する冒頭の3択クイズ13問でボロボロになります。私は2問しか正解できませんでした。「あれ?」なんで? って思いましたが、自分の判断の根拠としている情報が古い記憶や印象なんだなと思います。認知を正しくしないと、その先の思考・行動がブレブレになってしまいます。大きな方向性を誤らないためにも、改めて立ち止まり、俯瞰して考え、正しい情報をとりにいく行動に持っていくためにも、気づきを得られてよかったなと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯分断本能(「世界は分断されている」という思い込み)

・話の中の「分断」を示す言葉に気づくこと。それが重なり合い、2つのグループを連想させることに気づくこと。多くの場合、実際には分断はなく、誰もいないと思われていた中間部分に大半の人がいる。

・中所得の国と高所得の国を合わせると、人類の91%になる。そのほとんどはグローバル市場に取り込まれ、徐々に満足いく暮らしができるようになっている。

・分断本能を抑えるには、大半の人がどこにいるか探すこと。

 

◯ネガティブ本能(「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み)

・ネガティブなニュースに気づくこと。そして、ネガティブなニュースの方が、圧倒的に耳に入りやすい。ネガティブな本能を抑えるには、悪いニュースの方が広まりやすいと覚えておくこと。

・悪いと良くなっているは両立する。

・ゆっくりとした進歩はニュースになりにくい

・統計を読み解くには、数値の差が10%程度かそれ以下である場合、その差をもとになんらかの結論を出すことには慎重になるべきと覚えておこう。

 

◯直線本能(「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み)

・グラフは真っ直ぐになるだろうという思い込みに気づくこと。何でもかんでも、直線のグラフを当てはめないようにしよう。多くのデータは直線ではなく、S字カーブ、滑り台の形、コブの形、あるいは倍増する線の方が当てはまる。

・直線本能を抑えるには、直線もいつか曲がることを知ろう。

 

◯恐怖本能(危険でないことを恐ろしいと考えてしまう思い込み)

・恐ろしいものには、自然と目がいってしまうことに気づくこと。恐怖本能を抑えるには、リスクを正しく計算すること。

・世界は恐ろしいと思う前に、現実を見よう。

 

◯過大視本能(「目の前の数字が一番重要だ」という思い込み)

・ただ一つの数字が、とても重要であるかように勘違いしてしまうことに気づくこと。

・過大視本能を抑えるには、比較したり、割り算をしたりするといい。

・ひとつの数字だけに注目しないこと。数字を一人ぼっちにするのは絶対だめ。ひとつの数字がそれ自体で意味を持つことなどない。

・特に大きい数字を見せられたら注意。不思議なことに、ある程度ケタの数が増えると、他の数字と比較しない限り、どんな数でも大きく見える。数字が大きく見えると、その数字がさも重大なことを表しているように思えてくる。

 

◯パターン化本能(「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み)

・ひとつの集団パターンを根拠に物事が説明されていたら、それに気づくこと

・同じ集団の中にある違いを探そう。違う集団の間の共通項を探そう。

・パターン化本能を抑えるには、分類を疑おう。

 

◯宿命本能(「全てはあらかじめ決まっている」という思い込み)

・いろいろなものが変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと進んで起きているからだと気づくこと。

・小さな進歩を追いかけよう。知識をアップデートしよう。

 

◯単純化本能(「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み)

・ひとつの視点だけでは世界は理解できないと知ること。単純化本能を抑えるには、なんでもトンカチで叩くのではなく、さまざまな道具の入った工具箱を準備した方がいい。「子供にトンカチを持たせると、なんでも釘に見える」ということわざがある。

・単純化本能を抑えるには、ひとつの知識がすべてに応用できないことを覚えておこう。

 

◯犯人探し本能(「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み)

・誰かが見せしめとばかりに責められていたら、それに気づくこと。犯人ではなく原因を探そう。ヒーローではなく、社会を機能させている仕組みに目を向けよう。

・犯人探し本能を抑えるには、誰かを責めても問題は解決しないと肝に銘じよう。

・「ガイジン病」。かつて梅毒の呼び名は、ロシアではポーランド病、ポーランドではドイツ病、ドイツではフランス病、フランスではイタリア病、イタリアではフランス病と呼ばれた。誰かに罪を着せたいと思う本能は、人間によほど深く根付いているのだろう。

 

◯焦り本能(「今すぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み)

・今すぐに決めなければならないと感じたら、自分の焦りに気づくこと。焦り本能を抑えるには、小さな一歩を重ねるといい。

 

 思い込みと思い込みを正しいと思って理屈を後付けするという行為の怖さを感じます。思い込みと自分を正当化する人間の本能が絡み合うことが人間関係のもつれの原因にもなります。改めて注意していきたい分野です。

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