科学的な適職(鈴木祐)
『科学的な適職』(鈴木祐)(◯)
就職・転職の失敗の7割が視野狭窄。本書は、仕事選びにおける意思決定の精度を高めることを目的に、分かりやすい職業選びの視点をまとめた一冊。「えっ?」という驚き、気づきも得られ、就職・転職が頭をよぎる方は一度目を通しておくと参考になると思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯仕事選びの戦略
①幻想から覚める
②未来を広げる
③悪を取り除く
④歪みに気づく
⑤やりがいを再構築する
◯仕事選びにおける7つの大罪(幻想から覚める)
①好きを仕事にする
・適合派:好きなことを仕事にするのが幸せ
・成長派:仕事は続けるうちに好きになるものだ
⇨適合派の幸福度が高いのは最初だけ。好きを仕事にするとスキルも伸びない。
・今の仕事に対する情熱の量は、前の週に注いだ努力の量に比例する。
・その仕事に情熱を持てるかどうかは、人生で注いだリソースの量に比例する。
②給料の多さで選ぶ
・給料と仕事の満足度は「r=0.15」の相関関係しかない。
・パートナーとの結婚から得られる幸福度の上昇率は、収入アップから得られる幸福度より767%も大きい。
・健康レベルが「普通」から「ちょっと体調がいい」に改善したときの幸福度の上昇率は、収入アップから得られる幸福度より6531%も大きい。
・離婚や失職による幸福度の低下率は、年収が3分の2も減ったときの幸福度の低下に匹敵する。
③業界や職種で選ぶ
・問題は、専門家の予測が全く当てにならないこと。
・「歴史の終わり幻想」:大半の人は「現在の価値観や好みが最も優れている」と思い込み、過去に起きたような変化が未来にも起きる可能性を認めません。
④仕事の楽さで選ぶ
⑤性格テストで選ぶ
⑥直感で選ぶ
⑦適性にあった仕事を求める
・「強み」と仕事の満足度には有意な関係があるものの、その関係はとても小さい。
◯仕事の幸福度を決める7つの徳目(未来を広げる)
①自由:その仕事に裁量権はあるか?
・「タバコは吸うけれど会社内の自由度が大きい」人と、「タバコは吸わないが会社内の自由度が小さい人」では、後者の方が体を壊しやすい。
②達成:前に進んでいる感覚は得られるか?
・小さな達成。人間のモチベーションが最も高まるのは、少しでも仕事が前に進んでいるとき。
③焦点:自分のモチベーションタイプに合っているか?
④明確:なすべきことやビジョン、評価軸ははっきりしているか?
⑤多様:作業の内容にバリエーションはあるか?
⑥仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか?
・給料の多さや仕事の楽しさなどの要因とは関係なく、社内に良い友人がいるだけでも人生が幸福になるのは確実。
⑦貢献:どれだけ世の中に役立つか?
・社会への貢献が大事なのは、自尊心、親密感、自律性が高まるから。
◯私たちに悪影響を及ぼす職場の特徴(悪を取り除く)
・時間の乱れ:働く時間の混乱が原因で健康リスクが増大する。データの傾向は世界中で一致しており、週の労働時間が40時間を過ぎたあたりから体が壊れ始め、週55時間を超えると確実にあなたの心身は崩壊に向かい始める。
・職務の乱れ:仕事の報酬の内容に一貫性がないせいで体を壊す。
・職場の「8大悪」ワースト・ランキング
①ワークライフバランスの崩壊
②雇用が不安定
③長時間労働
④シフトワーク
⑤仕事のコントロール権がない
⑥ソーシャルサポートがない
⑦組織内に不公平が多い
⑧長時間通勤
◯3つの意思決定ツール
①プロコン(メリデメ)分析
・悩みの記入⇨プロコンのリストアップ⇨プロコンの採点⇨最終判断
②マトリックス分析
・基準のリストアップ⇨候補のリストアップ⇨重要度の記入⇨重みの決定⇨最終判断
③ヒエラルキー分析
◯バイアスを取り除くための4大技法(歪みに気づく)
①10/10/10テスト
・「この選択をしたら、10分後、10ヶ月後、10年後にはどう感じるか」を伝える。
②プレモータム
・敗北の想定、原因の探求、過程の想起、対極の考案を行う。
③イリイスト転職ノート
・1日15分〜自分がその日行った「職選びに関する意思決定」の内容を三人称で磨く。
④友人に頼る
・360度フィードバック、クローズドクエスチョン、親友イメージングを活用
「好きなことを仕事にする」というのは、理想的な働き方として捉えていたので、逆の結果であり、驚きでした。何事も情報に踊らされてはいけない。データで語られると増します。そして、労働時間が幸福感にもたらす影響は、相当大きいことも学びになりました。