高野山大学で受講している5講座のうちの一つに「仏教要論1(仏陀の伝記)」があるので、再読してみました。やはり昭和を代表する仏教研究家である著者の訳はとっても読みやすいことを認識しました。ブッダの生涯と主要な教えがまとまった一冊。各経典の関連する複数の該当箇所がまとめられているのがわかりやすさのポイントのように思います。まだ理解できないところも多いですが、2回目を読むことによって、理解が進んでいることも実感できます。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯人間のありよう
・世の中は行為によって成り立ち、人々は行為によって成り立つ。生きとし生ける者は業(行為)に束縛されている。進みいく車が楔に結ばれているように。
・人間は「死すべきもの」だというのが、人間の本質的な特徴のひとつ。
・二つ目の特徴として、人間は欲望に衝き動かされている生き物である。
・さらに人間は欲望や執着によって、「自己でないものを自己とみなし、自己のものでないものを自己のもの」とみなしている。
◯苦しみとは何か
・生も苦しみである。老も苦しみである。病も苦しみである。死も苦しみである。愛さない者と会うことも苦しみである。愛する者と別離することも苦しみである。すべて欲するものを得ないことも苦しみである。要約していうならば、五種の執着の素因(五取蘊)は苦しみである(『律蔵』)
・この句から「四苦八苦」という言葉が出ている。「生老病死」は「四苦」と言われ、残りの四つ「怨憎会苦」「愛別離苦」「求不会苦」「五盛陰苦」「五取蘊苦」を加えて「八苦」という。
◯人間は欲望の存在
・「八つの詩句の章」(アッタカ篇)
①妄執:人間の存在の根底には欲望、貪欲が潜んでいる
②執着:それらに基づいて執着が起こる
③生存:そのためにいろいろな危難が降りかかってくる
④生と老と死:それゆえに苦しみがついてくる
・『スッタニパータ』より
①人間は外面的なもの、物質的なものについて苦悩している
②それはなぜかと言えば、身体があるからだ
③そこで苦悩を滅するには身体への執着を捨てることである
④ではどうすれば身体への執着を捨てられるかは、まだ答えが出ていない
・貪瞋痴の三毒(『サンユッタ・ニカーヤ』)
①貪り(貪欲)
②憎しに(嫌悪)
③迷妄(愛執)
の3つから生じる。
◯ まず自分を正しく整える
・他人に教える通りに、自分でも行え。自分をよく整えた人こそ、他人を整えるのであろう。自己は実に制し難い(『ダンマパダ 』)
・自らはぬかるみ(泥濘)に陥っている人が、同様にぬかるみに陥っている他人を救い出そうとしても、それは道理にかなわぬことである。自らはぬかるみに陥っていない人が、ぬかるみに陥っている他人を救い出そうとするならばん、それは道理にかなったことである。
◯四無量心、四無量、四梵住
・解脱は究極の目的であると考えられて除かれ、残りの四つがまとめて解かれるようになる。「慈しみ」「悲しみ」「喜び」「平静(無関心・捨)」の4つ。修行者はこの「慈・悲・喜・捨」の四つの徳を修せよと言われるようになる。
ちなみに、高野山大学の講座のレポート課題ってこんな感じです。マニアックさが伝わるかなぁ?
・課題1「仏伝に見られるブッダの神通力の意味について論ぜよ」(3,800〜4,000字)
・課題2「仏伝における神と魔の役割・性格について論ぜよ」(3,800〜4,000字)