MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

劣化するオッサン社会の処方箋(山口周)

『劣化するオッサン社会の処方箋』(山口周)

 タイトルにある「オッサン」とは、中高年の男性を指すおじさんのことではなく、次のような特徴をもく傍若無人な振る舞いをして自らを顧みない人たちのこと。

①古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する

②過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない

③階層序列の意識が強く、目上のものに媚び、目下のものを軽く見る

④よそ者や異質なものに不寛容で排他的

 本書は、『エリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で有名な著者による企業や社会を滞らせる存在であるオッサンにスポットをあて、オッサンにどう対処すればいいのか、自分がオッサンにならないためにやるべきことは?ということを解説する一冊。様々な組織に当てはまる内容でもあり、興味深い内容でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯なぜオッサンは劣化したのか

・現在の50代・60代のオッサンたちは「大きなモノガタリ」(いい学校を卒業して大企業に就職すれば一生豊かで幸福に過ごせる)の喪失以前に社会適応してしまった最後の世代。

・会社や社会システムに乗っかってさえいれば、豊かで幸福な人生が送れるという幻想の中で過ごしてしまった。

 

◯劣化は必然

・三流が数の上では圧倒的。数がパワーとなる時代において、構造的に最初の大きな権力を得るのは、いつも大量にいる3流から支持される2流。

・数の勝負に勝とうと思えば、3流に受けなければならない。資本主義がこれだけ膨大な労力と資源を使いながら、ここまで不毛な文化しか生み出せていない決定的な理由はここにある。

・二流のリーダーが率い、三流のフォロワーが脇を固める一方で、一流と二流の人材は評価もされず、したがって重用もされず、日の当たらない場所で燻ることになる。

 

◯中堅・若手がオッサンに対抗する武器

・「人的資本」+「社会資本」=「モビリティ」

・汎用性の高いスキルや知識などの「人的資本」と信用や評判といった「社会資本」を厚くすることで、自分の「モビリティ」を高めるしかない。

・どのような場所でも生きていけるためにスキル・知識を獲得する。今いる場所を「いつでも出ていける」ような状態にするために学び続ける。

 

◯学続ける上で重要なのは経験の質

・多くの企業において、「経験の質」を決定する仕事のアサインメント(割り当て)は、オッサンたちがになっている管理職という仕事によって、規定される。

・「70:20:10」の法則。個人の能力開発の70%は、実際の生活経験や職業上の経験、仕事上の課題と問題解決によって発生する(直接学習)。

・良い経験をできる重要なポジションに年長者が居座っているから、「良い業務経験」を積ましてあげられず、人材が育成できていない。

・良いリーダーは、良い業務経験によって作られ、その良いリーダーがまた良い業務経験を他人に与えてリーダーを育成する。つまり、リーダーというのは、一度生まれると拡大さ再生産される傾向がある。

 

サーバントリーダーシップ

・地位にかかわらず、他者に奉仕したい

・協力して目標を達成し、皆がWin-Win

・信頼関係を築き、部下の自主性を尊重

・部下の話を傾聴する

コーチング、メンタリングから部下と共に学ぶ

・個人のやる気を重視し、組織の成長と調和させる

・責任を明確にし、失敗から学ぶ環境を作る。

セカンドライフステージでの挑戦と失敗の重要性

・人生のピークがかなり後半側にシフトしている。必然的に「仕込みの時間」が長くなる。

・「50にして天命を知る」とは、残された時間を何に使っていくのかを明確にするという「覚悟」の問題でもある。

・セカンドステージにおいて、自分には一体何ができるのか?ということを見極めていくことが重要。「何かを止めないと、何かにチャレンジできない」。チャレンジの難しさの本質は、チャレンジそのものよりも、それ以前に横たわる「何かを止めること」にある。

・基本は「同じ業界」×「違うスキル」でのチャレンジをいくつか繰り返し、スキルの幅が広がってから「違う業界」×「同じスキル」に移動するというのが良い。

 

◯まとめより

・オッサンはどうやったら輝けるのか。サーバントリーダーシップの発揮というのは一つの道かもしれない。あるいは、何らかの学び直しにより、自分自身の社会的な位置づけをパラダイムシスとする。ということも考えられる。

 

  本書を読んで思ったのは、一朝一夕には変わらないなということ。それだけ一旦社会に根差してしまったものは変わりにくいということ。ひと世代変わって、問題意識を持っていた人たちが多数はとなり、かつ意思決定層にまで昇格してくる時代になれば状況がようやく変わるのかもしれません。

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