『売上を減らそう』(中村朱美)(◯)
京都で国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」を経営する著者が、「ランチのみ1日100食限定で残業ゼロという飲食業界の常識を覆す経営の実態を語った一冊。かなり引き込まれるストーリーと工夫があり気づきが多かったことや、時間を決めてその中で最大の成果(顧客満足度)を高めるという取り組みが、価値観的にも近かったことからとても共感できました。時間を伸ばして稼ぐという従来の経営から脱却した経営スタイルは、未来の働き方を後押しする企業側の取り組みとしても要注目だと思います。読んでいると、思わず一緒に働きたくなる、そんな良さが伝わってきます。京都に行ったら真っ先に食べに行ってみたいです。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯冒頭のメッセージより
・ランチのみ国産ステーキ丼専門店
・どれだけ売れても、1日100食限定
・インセンティブは、早く売り切れば早く帰れる
・営業はわずか3時間半、11時〜14時半
・飲食店でも残業ゼロ
・なのに従業員の給料は、百貨店並み
◯『まんがでわかる絶対成功!ホリエモン式飲食店経営』(堀江貴文)より
・サービスを極限まで絞ることで売上を上げているお店
・飲食店の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる
◯売上について
・「100食以上売ったら?」「昼だけじゃなくて、夜も売った方が儲かるのでは?」
・確かに売上は上がるでしょう。でも働く時間は増えるのに、給料はあまり変わらない。会社が儲かっても社員が報われないのはおかしい。
・もう「頑張れ」なんて言いたくない。私は「仕組み」で人を幸せにしたい。
◯100食限定というビジネスモデルが生み出したもの
①「早く帰れる」退勤時間は17時台
②「フードロスほぼゼロ化」で経費削減
③「経営が究極に簡単になる」カギは圧倒的な商品力
④「どんな人も即戦力になる」やる気に溢れている人なんていらない
⑤「売上至上主義からの解放」より優しい働き方へ
・100食という制約はすべてのブレークスルーを生み出した。それはそのまま「佰食屋」という屋号になり、「限定」というお客様の「来店動機」となり、「売上ファーストではなく従業員ファースト」という「経営方針」にもなり、ついには従来の業績至上主義とは、「真逆の働き方」が出来上がった。
◯どうしても一人少ない日は、売上も一人分減らせばいい
・いつもより一人少ない4人体制でお店を回すことになるなら、その分20食少ない80食を目標にする。
・「休んでいいよ」と許可するのは経営者である私の責任。従業員が「休みたい」という気持ちを尊重し、結果として4人でお店を回すことになったのなら、売上を下げてでも休ませてあげるのが経営者としての役割。その日に出るマイナス分の売上は、必要経費。
◯100食限定は儲かるのか
・3店舗経営。2018年8月期は売上1億7000万円超。しかし、2018年6月に関西一円を襲った大阪北部地震の影響で、営業利益は約600万円の赤字となった。
・夫の不動産部門というもう一つの柱があって、その赤字をカバーすることはできたし、会社を揺るがすほどの危機には至らず、何とか乗り越えることができた。
・佰食屋のスタンスは、とにかく倒産さえしなければいい。会社として存続していけたらいい。
利益を追いかけず、社員の働きやすさを追いかける。何を求めて経営するかという価値観を考えたり、これからの時代の働き方を考える上で、とても参考になる一冊でした。「利益でないと意味ないんじゃない?」と思った瞬間。もうそれは固定概念かも。少なくとも株主と経営者が一致している企業では、どう経営したいかは、経営者の自由なわけで、会社がきちんと維持される水準の利益を確保すれば、その先のビジョンは自由になる(経営者でもそういう働き方が増える)時代に変化していくのではないかと思います。100年人生ですから、長く、自分らしく働ける環境というのはニーズがますます高まっていくと思います。