MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

密教とマンダラ(頼富本宏)

密教とマンダラ』(頼富本宏)

 高野山大学のレポート提出に向け密教シリーズ。本書は、マンダラの特徴と最終章の密教の世界観についてのまとめの箇所が参考になりピックアップ。今回のレポートのテーマもなかなかの難しさ。

【設問】真言密教の思想特色として現実重視が挙げられるが、それは具体的には密教思想のどのような点において確認することができることか。即事而真、当相即道、あるいは煩悩即菩薩という言葉、さらには真理の表現としての曼荼羅などに注意しながら論じてください。自己中心的な欲望と普遍的な欲望との関係について、上記の言葉と関係させながら論じるようにしてください。(3,800〜4,000字)

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯マンダラの特徴

①「空間」「領域」「場」などの概念。マンダラとは、一つの点や、それを繋いだ線ではなく、広がりを持った空間。それであるからこそ、その内と外、つまり聖と俗という異次元の関係が常に注目される。

胎蔵界マンダラでは、複数性。中央に本尊の大日如来が位置し、その周囲を数多くのほとけたちが、様々な働きをしながら取り囲んでいる。

③中心を持つこと

④調和性という特徴

⑤必ず動的な流れが感じられる。

⑥交換性。各尊の位置が永遠不滅にそのままであるとするのは、決してマンダラの真意ではないはず。

⑦全体性。例えわずかでもマンダラの外周部に不都合が生じたとき、そこだけ切り取って残りは無事という考えはできない。マンダラでは、部分はあくまでも全体の一部であって、部分と全体は表裏一体である。

 

密教の特徴

・単一透明でただ一つの中心軸だけですべてを価値判断する世界ではなく、異質的・矛盾的要素すら内包した実に有機的な世界。

・共通項目として抽出された4つの密教の特徴

①総合性

 他の教えや価値体系を決して排斥して棄てさるのではなく、みずからの大きな体系の中に取り入れて積極的に位置を与える傾向が強い。

 「九顕十密」。例え中間的な段階にある教えであっても、見方を変えれば、広大な密教の世界の中にそれ自身の場所を与えられていると考える。このような発想はマンダラの中に描かれているほとけの中には、もともと異教の神々で、しかも仏教に敵対するものがあったのに、それが立場をかえて仏教に味方するものとして摂取され、有効に働いていることも無関係ではない。

 唯一の座標軸や価値観に固執するのではなく、例えば、高い見晴らしの良いところに上れば、展望が開て遠くまで見通すことができるように、みずからの視点をより高次な立場から普遍化することによって、できるだけ多くのものを余りなく、しかもそれぞれの役割を与えて総合的に包括しようとするのは密教の第一の特徴。

 

②宇宙性

 密教の基本構造は、異次元ともいうべき聖なる境地を、われわれの心と身体を総合止揚した、いわばトータルの存在として感得することにある。われわれを包み込む大宇宙と、身体存在に象徴される小宇宙との一体化を瑜伽(ヨーガ)とよんだ。また日本の密教の教養では、この実在世界をトータルなものとして象徴する大日如来が厳然としてあり、またわれわれ修行者は、みずからを密教的修行者である金剛薩埵であると感じ、両者の相即を実感する。これを「入我我入」「即身成仏」と称している。

 

③芸術性

 密教が聖なる世界を象徴的に把握するために、われわれの生身の感覚や直感をむしろ有効に利用することを目指している。すなわち、人間の情念や感覚を極力しずめる方向へ向かうのではなく、逆にわれわれが本来備え持っている表現能力を最大に発揮することを目指す。

 

④体験性

 密教のように、聖と俗という垂直的なつながりを基本とする宗教では、心と身体を総合した全身的な修行を通して、換言すれば、カオス的俗合一の体験を通して、結果としてコスモス的世界に到るのであり、こうした瑜伽体験こそが密教の眼目であると言っても過言ではない。

 つまり、教理や知識が先にあるのではなく、ほとけをみずからの内に感じとる実感があってこそ、密教の思想・教理ができ上がるのである。

 

  なかなかこのレポート設題も「何のことやら?」からスタートし、いまだゴールは見えておりませんが、そのうち何らかの形にまとまると思うと、調査・情報収集力というのは大切で能力になります。設題があるからこそ、新たな本にも出会え、こういった強制力も読書面でプラス効果となっています。 

密教とマンダラ (講談社学術文庫)

密教とマンダラ (講談社学術文庫)

  • 作者:頼富 本宏
  • 発売日: 2014/04/11
  • メディア: 文庫
 

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