MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

堀江貴文2035(堀江貴文)

堀江貴文2035』(堀江貴文)(◯)

 堀江貴文さんが10年後の日本に関する58のトピックスについて、思うところを広く語った一冊です。堀江さんの先を見る目もさることながら、知見の広さには驚くばかりです。これからの10年を考える上で、気づき・学びの多い内容です。これが1,400円+税とは学びのツールとしてもお得感がありました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯Chat GPT

・GPTが真のシンギュラリティ(技術の特異点)を果たすうえで、最後にして最大の壁は「個性」。個性は獲得できる。Chat GPTの記憶力(容量)は今のところ25,000文字だからカバーできる範囲は限定的だが、そのうち飛躍的に増強される。

・自分が発信したものをChat GPTに学習させていけば、自分の業務の一端を担ってくれる。堀江さんは、取材のコメント、本の帯を書く仕事などは、Chat GPTに第一案を出させているとのこと。

 

◯亡くなった人も蘇る

・2019年紅白歌合戦美空ひばりさんの声がAI音声合成の技術で蘇った。そこからさらに技術は進化している。

 

◯AIデスクワーク

・今後、ホワイトカラーの9割がAIによって今の職を失う。徐々にではなく一気に。

マイクロソフトが、Microsoft 365 Copioltという新サービスを発表。これにより、Microsoft 365の全ソフトにGPTが組み合わさり、Chat GPTのようなチャット形式でAIに指示できるようになる。2023年中にもリリースされる。

 

◯クリエイターの定義

・多数の「素人+AI」と、一部の「才能あるクリエイター」という構図になっていくはず。

 

◯違法駐車撲滅

スマホで撮影した違反車両の写真を、誰でもそのまま警察に送信できるアプリを開発すればいい。犯罪(駐車違反)をでっち上げることはできないし、そもそも通報者に報奨金が発生するわけでもないので、でっち上げるメリットもない。

 

がん保険料は大幅値上がり

少子高齢化が突き進んでおり、今ですら割高ながん保険料だが、今後はさらに保険料を値上げしていかないと、保険会社のビジネスは成り立たなくなる。

 

◯資産形成の鉄則

・「長期、分散、低コスト」、この投資の鉄則は、10年後の未来も普遍。

・0.5%を上回る手数料を取る商品には手を出さない。

 

◯働き先として除外される日本

・今や東南アジアは経済成長の最中。日本で働くメリットは見出しづらい。実際、東南アジアや中国の若者たちは、日本ではなくアジア各国の大都市に集まり始めている。

 

◯タイパ格差が広がる

・リモートワークによって生産性が向上する人も少数派ながらいる。彼らはその恩恵に浴し、タイパを高め、高水準のワークライフバランスを獲得する。

 

◯満員電車は不滅

・保守的な人は、不自由な従来のライフスタイルに拘泥する。そこに不満はあるものの、ぶつぶつ愚痴ることでしかできない。変化を恐れるから。そして、今日も明日も電車ですし詰めになる。

 

マッチングアプリが王道になる

・『林先生の初耳学』(毎日放送)が行った調査が興味深い。日本の直近6年間の離婚率は6.8%だが、マッチングアプリ経由で結婚した夫婦の離婚率は4.5%。それだけ多彩な選択肢から選りすぐりの相手と出会うのだから、離婚率が低いのも納得。

 

◯老人の定義が変わる

・親世代と比べて平均寿命が伸び、10歳は若々しくなっている。実態に則して高齢者の年齢の定義を繰り下げてみるとどうなるのか。すると日本の抱える社会問題に光明がさす。

 

◯全国3万の橋が一気に崩れる

・橋の耐用年数はおおよそ50年。高度成長期の1970年代に大量のインフラが新設されたが、それが一斉に耐用年数に達しつつある。更新には多額の予算(すべてメンテナンスすると約束190兆円)がかかるため使用禁止となっている。これが一気に崩れ落ちる。

 

◯スタートアップに人が流れる

・スタートアップ経験者の人材価値が急騰している。今やスタートアップで実績さえ残せば、その後のキャリアは順風満帆だろう。

 

◯日本の産業は三極化する

・エリートは大企業に、野心的な人材はスタートアップなどのベンチャー企業に、それ以外の人はミクロな企業に乗り出す。

 

 他にもいろいろあります。特に、これから10年で大切にしようと思ったのは働き方。従来型に固執せず、自由度を残した働き方の選択。この自由度の中にある余白に新たなものが生まれてくるように思います。本書は買いやすい価格でもありますし、気になった方は読んでみることをお勧めします。