韓非子の入門編として、とても入りやすい一冊です。韓非子は、中国戦国時代の思想家。西のマキャベリ、東の韓非子と言われるくらいの人物で、著者名と同じ著書「韓非子」は、人間不信の哲学書です。人間不信というように、人間を性悪説から見ているのが特徴で、そいういった側面を持つ人間をどのように統治していくかということが多方面の切り口から書かれています。今の時代にも通じる内容です。
【本書の学び】
①組織掌握のためには「法」と「術」が必要。「法」は法律、「術」は法を運用して部下をコントロールするノウハウ。
②「術」の3つの側面。1)賞と罰、2)勤務評定、3)好き嫌いを表に出さない
③性善説の社会は暮らしやすいが、人間を見る目が甘くなる。一歩外に出ると容易に通用しないことを覚悟しておくべし。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯まず相手の心を読んで対応する
・トップを説得することの難しさは、相手の心を読み取った上で、こちらの意見をそれに当てはめること。この1点に尽きる。
◯本心がどこにあるのかを見極める
①相手の心を読み取ること
②相手の信頼を勝ち取ること
③相手の気持ちに逆らわないこと
④自分の立場や状況を考えること
⑤相手の急所に触れないこと
◯「下君は己の能を尽くし、中君は人の力を尽くし、上君は人の智を尽くす」
・自分の能力しか使えないようなリーダーは最低であって、人の智力をうまく使えるようなリーダーが最高。本人が目の色を変えて飛び回っているようでは、まだそれほどのレベルとは言えない。
◯五を捨てて、十を取る
・髪を洗うと抜け毛が出てきて捨てなければならない。だが、一方では洗うことによって髪の成長を促進させるという大きなプラスがある。抜け毛を捨てるという小さなマイナスに目をつぶって、大きなプラスに目を向けるのが政治。
・政治はバランスの力学。常に何を捨て何を取るかの判断を迫られる。その機能がきちんと作動していれば政治を前進させていくことができるが、つまらぬ思いやりや既得権などというものに縛られて、捨てるべきものを捨てきれないようでは、政治は硬直していくばかり。
◯時を待てるか?
・明君が大きな功績を立てて後世に名を残すのは、次の4つを踏まえているから。
①天の時
②人心を得ること
③技能
④勢位
◯小さな悪事を見逃さない
・「小姦」だからと言って見過ごしていたのでは、やがてそれが「大謀」に発展する恐れがある
・「小誅」だからと言って適用するのをためらっていると、次々と悪事を働くものが出てきて収拾のつかぬ混乱を招く恐れがある。
◯15人の名臣の共通点
①朝は早くから夜は遅くまで政治に精励した
②常に謙虚な態度で、与えられた責任を果たそうとした
③法を貫徹し、人材を登用して、よく主君に仕えた
④道理に基づいた進言を行って、よく主君を補佐した。
◯内面外面ともに充実させる
・「内憂外患」
・内憂とは、内部要因、外患とは外部要因。
・内憂とは例えば次のようなもの
①上層の意思が統一されていない
②組織の士気が低下してしまった
③人材が育たなかった
④派閥争いが絶えない
いいところに着目することも大切。一方で悪いところに着目することも大切。100%偏った人はいないように、人間には善悪どちらの面もあり、両方を想定したバランスが問われると思います。普段、性悪説に慣れていないとなれば、「韓非子」はいい本だと思います。